ニッケイ新聞 2011年5月20日付け
著書「戦時下の日本移民の受難」出版記念会で安良田済さんは、「我々の世代で記録しなければ、日本移民が虐げられた4年間の歴史が無くなると思った」と話した。
ブラジルが日本との国交を断絶した1942年、当時の大統領はジェツリオ・ヴァルガスだった。矛盾に満ちた多くの政策で知られるが、工業化を中心にブラジルに大きな変革をもたらした大統領だ。
今もブラジル史上最も偉大な政治家だとの声があり、記者もそのイメージが強かったが、枢軸国の移民に対するこの政策は、本書を通し、大きな衝撃を伴って頭に残った。
「事実」は、記録され人に認識されて初めて「歴史」となる。そのことが、歴史が無くなるという表現で強く印象付けられた。コロニア史の闇の部分を掘り起こした同氏の偉大な功績に、敬意を表したい。(詩)