改善進まぬサンパウロ州の高校教育=3年生で10歳の算数=学年相当はポ語で0・5%=不振の原因は教育制度にも
ニッケイ新聞 2011年5月24日付け
サンパウロ州立の初等教育校(小、中学校)3、6、9年生と中等教育校(高校)3年生の学力試験の結果が19日に発表され、高校3年生の数学の理解度は10歳児レベルで、数学で57・7%、ポ語でも37・9%が学力不足と評価されたと21日付伯字紙が報じた。
ブラジルの基礎教育レベルが国際的に見て低い事や小学生程度の問題が解けない高校生もいる事は従来からいわれていたが、教員養成システムや私立校の教材導入などで、改善が期待された試験で予想外の結果が出た事は、現場や行政の担当者を当惑させたようだ。
今回発表されたのは、昨年行われたサンパウロ州学力判定システム(Saresp)の結果で、最終学年生が高校卒業に相応しい学力を身につけていると判断された高校は、数学と科学で0%、ポルトガル語で0・5%という散々な成績だ。
500点満点での得点をポ語、数学、科学の3分野で比べた結果、ある程度の評価を得たのはポ語だが、それでも、高校生としての基礎的な力ありとされたのは77・61%、基礎レベルに達していないとされたのは21・72%だった。
これに対し、最も評価が厳しかった数学は、基礎的な学力ありが14・92%、基礎レベルに達していないとされたのは85・07%で、加減乗除の四則計算さえ危ない生徒も相当いる。
生物と化学、物理の自然科学についても、基礎的な学力ありが28・02%で、基礎レベルに達していないとされたのは71・97%。州内603校の生徒の39・7%は、学力不十分と判断された。
その一方、08年のポ語の成績は州内平均の272・5点を下回る263・1点だったイブライン・ノブレ校が、平均の265・7点を大きく上回る301・7点を取るなどの喜ばしい報告もあり、州政府は現行の教員訓練プログラムをさらに充実させる意向だ。
ただ、従来は昼間働く人だけが学んでいた夜間コースが、教室不足などが原因で不就労の学生が半分を占めるなど、教育現場や行政上の不行き届きも否めない。
建設会社の協力で教室が2つ増え、朝のコースに移った生徒が、学習意欲も沸くし効率もずっと良くなったと話す例などを見ても、学業成績の不振は教師や生徒だけのせいとは言い難く、物的環境の整備も不可欠だ。
20日付G1サイトによれば、サンパウロ市クリニカ病院で学業不振の悩みを抱える生徒を扱う教育心理の専門家ナヂア・アパレシーダ・ボッサ氏は、貧困家庭児などの成績不振は教育システムの問題でもあり、現場を知らない政治家が教育政策を差配する事や家庭と学校の連携不足などを改善し、9年生までに基礎を作る事が肝要と話している。