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下院=環境保護法で与党が分裂=政府の意向に反し承認=上院通っても大統領は拒否=パラーでは活動家殺害も

ニッケイ新聞 2011年5月26日付け

 ジウマ大統領が選挙戦中に環境保護政策の後退を認めないと公約したにもかかわらず、24日の下院が、政府の意向に反する環境保護法定案と付随する暫定令を承認と25日付伯字紙が報じた。

 2010年中に基本部分が承認された環境保護法改定案は、ジウマ政権にとって最初の汚点となる事を避けるため、承認が何度か先送りされてきたが、24日の下院本会議は、改定案と暫定令の双方を与党の民主運動党(PMDB)議員らも含む絶対多数で承認した。
 1965年制定の環境保護法は森林や植生の保護と農林業のバランスを保つために不可欠の法案で、細則は変更されても基本条項は不変であったため、12年かけて改定が議論されていた。
 今回下院が承認した改定案と暫定令は上院審議後に大統領裁可を仰ぐ事になるが、ジウマ大統領は、改定案と暫定令が上院で覆らなかった場合、政府の意向に反する部分または全体拒否の姿勢を明らかにしている。
 大統領や政府の意向に添わない点は4つで、改定案本文の問題点は、法定アマゾンは所有地の80%など、植生毎に定められた原生林保護率を、4区画以下の土地には適用免除という項目。土地の広さは州毎に基準が異なり、20〜400ヘクタールに相当するが、この項目の承認で、アクレ州に相当する1500万ヘクタールが保護対象外となり、不法伐採者は、処罰と共に伐採後の再植林義務も回避できる。
 暫定令には、水源地や川の周辺、山頂、急斜面などの恒常的保護域(APP)を開発した少規模農家の農牧業の継続を認める、2008年以前の伐採は環境保護法による罰則の適用免除、APPや保護区の制定権を国から州政府に移譲するの3項目が盛り込まれた。
 これら諸項目の変更で恩恵を受けるのは農業従事者や製材業者などで、改定案上程者のアウド・レベロ下議は、農業派議員に肩入れして農家を保護し、不法伐採者にも逃げ道を与えるとの批判を浴び続けた。
 一方、24日朝、同法案について話合うため参集した大統領と元環境相8人の元に届いたのは、パラー州在住の環境保護活動家、ジョゼ・クラウジオ・R・ダ・シウヴァ氏とその妻マリア・ド・エスピリトサント氏殺害の知らせ。不法伐採告発などで製材業者らに疎まれていた夫妻は以前から脅迫を受けていたが、同日朝、待ち伏せの2人組に射殺され、各々片耳を削ぎとられたと聞いた大統領は、連邦警察も導入して徹底捜査を行うよう法務相に指示。
 リオ市では2012年に20年ぶりのエコ会議開催の直前、環境保護法改定審議で森林破壊が急増した後に続く環境保護活動家の死と改悪案承認に対し、上院や大統領がどのような行動をとるかには、国内のみならず、世界が注目している。