ニッケイ新聞 2011年5月26日付け
日本の家はプレハブばっかりになって本当に弱い。それでも耐震とかには気配りしているようだが、寿命は30年位と極めて短い。北欧の工法だとかアメリカ流とか宣伝するけれども、とても弱くて寿命が短い。ならば日本の伝統的な建築ならどうか—と訊かれれば法隆寺や東大寺などの古刹を見れば一目瞭然というものである▲聖徳太子が創建の法隆寺は木造建築としては世界最古だし、あの太い柱や板も1000年を超してもびくともしない。釘も鍛錬し鍛えたものなので—これも1000年過ぎてもちゃんと役目を果たしているし、あの瓦だって1000年もの長い間しっかりと雨漏りを防ぎ、建物を守り寺院の美を輝かせている。和釘は長いものだと30センチは越え、太さも人の親指ほどに太い▲町家にしても、江戸の頃の北前船で活躍した商家のものが日本海沿岸にあり、文化遺産として一般にも公開されたりもしているが、これも建筑後2—3百年経っているが、見事なばかりの美しさを留めている。このためには日頃の手入れも大切だし、あるいは修理をしたこともあったろう。だが、昔からの伝統工法に従えば、丈夫で長生きの家がきちんとできるのである▲最後の棟梁と呼ばれた故・西岡常一氏は、法隆寺の宮大工で同寺の金堂を解体修理し薬師寺金堂と西塔再建を陣頭指揮した名人だが、家が古くなり倒れそうになったので新築するときに仲間らに「あなたが造れば何年持ちますか」と問われ「2百年」と答えたが、資金のこともあり、建売りで済ませたそうだが、日本も昔の工法の家を造れと号令すべきではないのか。(遯)