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日本の経験、ブラジルで生かせ=CIATE 二宮理事長らが講演=在日ブラジル人の姿勢に苦言も=NIATRE、ISECと合同で

ニッケイ新聞 2011年6月1日付け

 国外就労者情報援護センター(CIATE、二宮正人理事長)、今年1月に発足した帰伯労働者情報支援センター(NIATRE)、文化教育連帯学会(ISEC、吉岡黎明会長)の3団体の主催で、帰伯した労働者向けの講演会が28日、文協ビルの地下で開かれた。

 会場にはデカセギ経験者を中心に約130人が参加した。参加者たちは講演者の話に真剣に耳を傾け、質問も出るなど積極的な態度がみられた。
 最初に二宮理事長が、日本のブラジル人労働者の変遷や問題点、それに対するこれまでの取り組み等を概説した。
 二宮理事長によると、努力次第で日本語能力や携わった仕事のスキルを習得できるにも関わらず、それをせず、帰伯してもブラジルでの給料に満足できずに、結局日本とブラジルを行ったり来たりする人が多いという。「訪日するならその前に十分考えるべき」と警鐘を鳴らした。
 また、東日本大震災についても言及し、「被災地には幸いにもブラジル人は少なく、既に何人かは帰伯した。700〜800人ほどが首都圏に移されたらしいが、現状ではますます帰渡伯は難しいだろう」と述べた。
 次に、文協で週2回、帰伯したブラジル人子弟にポ語を教える酒井賛子さんが、子供達へのポ語教育について講演した。
 教室には、高校生1人、小中学生5人が通っている。「高校生の場合、学校の授業で使われる言葉が理解できない。小中学生では、幼い頃に訪日したため日ポ語両方の基礎がないことが大問題」と指摘した。
 「最も重要なのは、親が家庭でポ語を話すこと」だと言う。日本で子供に孤独感を感じさせないという意味でも、家庭でのコミュニケーションの重要性を説いた。
 次に吉岡黎明氏が登壇し、NIATREとISECの取り組みについて説明した。NIATREでは今年1月10日〜5月9日の間で580人程から約700件の相談を受けた。相談に訪れるのは過半数が男性、8割以上が日本からの帰伯者、大部分が数年の滞在経験者、6割が無職。
 内容は就職が大部分だが、教育、健康、帰伯後の保険や税金の手続き等の書類に関する相談も多いという。
 今年10月末までに2千人の相談を受けないと打ち切りになるNIATREの事業。吉岡氏は相談者数を増やすべく、パンフレットやビラ等を配って活動を告知しているという。
 最後にブラジル・トヨタの人事部長、中津川マルコス稔氏が、日本で働いた経験をブラジルで生かせるのかどうかという点から、同社が求めている人材像について説明した。
 現在トヨタではサンパウロ州ソロカバの新工場で、技術職、事務職を含め50〜100人の採用を考えており、面接を行なっているという。
 同氏が帰伯者に最も期待しているのは、時間を守る、同僚や上司を尊重する等日本で身に付けたマナー、働く態度だという。講演では「時間とお金と目的を持って投資し、毎日少しずつでも努力し勉強することが重要」と述べた。