ニッケイ新聞 2011年6月4日付け
宮沢内閣を倒し兵ぶりを発揮した小沢一郎さんも、今回の造反劇では菅首相の「引退の意向」で尻きれトンボになってしまった。これでよかった—と大喜びの向きもいるだろうが、切歯扼腕し「残念無念」と政界を睨む人もいる。不信任案を提出した自民党と公明党は、勿論ながら小沢さんや田中真紀子さんらも、衆院本会議を欠席と、これまた不気味な動きを見せている▼尤も、首相の退陣表明は、復興のめどがついたときに—とだけであり、何時辞めるのかは、わからない。極めて永田町的な発言だし、自民、公明などの野党は不信感を強くする。鳩山前首相も、首相が3日の参院で「年明け退陣」と発言したのに激怒し「ペテン師」と呼ぶ厳しさであり、党内抗争はまだまだ続き、政界の混迷は底なしに深まる▼小沢さんも、こんな状況を見れば、黙って引っ込んでいるわけにもいくまい。先の不信任案のときも、同志70人余と、菅首相を追い出そうと決起した経緯もあるし、この騒動はもっともっと広がる。自民党と公明党が、菅内閣打倒に立ち上がるのは必至だし、政界は荒れに荒れる。政局は、11年度予算の40%を占める赤字公債の発行を左右する特例公債法案や、大震災復興への第2次補正予算の難問もあり、こんな政治混乱は許されないのだが—▼もし、この対立激化が、平穏に収まらなければ—反菅派の民主党離れが起こる可能性も高い。小沢さんは、不信任案の造反劇で執行部から処分されれば「新しい党を」の決意を語っているし、政界は民主党の主役が終わり、多党時代に入る—そんな絵柄を描くことも出来る。(遯)