ニッケイ新聞 2011年6月10日付け
7、8日開催の中央銀行の通貨政策委員会(Copom)が、経済基本金利(Selic)を0・25%ポイント引上げ、12・25%とする事を全員一致で決めたと9日付伯字紙が報じた。基本金利の引上げは、今年に入ってから連続して4度目となっている。
今回の基本金利引上げ幅は、市場関係者の予想通り、4月と同じ0・25%ポイントだったが、前回とは違って全員一致の決定で、発表の際は、6月にも再び引上げを行う事を匂わせるような表現が使われた。
中銀にとって基本金利の引上げはインフレ対策の切り札的な存在だが、5月の数値がインフレの減速を示したといわれる中での引上げは、過去12カ月累積のインフレ率は6・55%で、政府目標の4・5%プラスマイナス2%の上限を超えた状態である事と、国内外に不安定な要因が重なっているためだ。
ブラジルのインフレは、国内消費の過熱で消費財とサービスを中心とした物価上昇が続いている事が最大要因。基本金利引上げは、個人融資などの返済金利上昇を嫌う消費者が、融資利用の物品購入を手控える事への期待と共に、銀行預金や投資ファンドの利息が高くなる事で、個人資金の運用化を考える消費者増を狙う意味もあるという。
ただ、基本金利の高さを利用して利ざやを稼ごうとする外国投資が盛んになる可能性は否定出来ない。ブラジルの実質金利は年6・8%で、2位のチリの1・5%と比べてダントツ。10位の台湾などは0・1%だ。
また、消費が下火になると共に、工業生産などが落ち込む事を懸念する人々にとり、2012年のインフレを政府目標値まで下げる事を念頭に置いた基本金利引上げが、産業活動を抑制するとの不安も拭い切れない。
国内の不安に輪をかけるのは、東日本大震災後の日本の復興や日本製の部品などの不足が招く世界各国の経済活動の停滞、国際的な金融危機以来回復が遅れる欧州、最近指標が落ち込んでいる米国などの動きだ。
国際的な動きも絡んでブラジル経済が減速すれば、景気浮揚策としての基本金利引下げなどの処置が必要となる可能性もあるが、それがインフレを再燃させる事も怖い。
金利引上げの発表の際は、「当面は」との表現が削られ、インフレ抑制に必要かつ十分な期間をかけた引上げ策実施との意向が表明されたため、基本金利の再引上げは不可避で、継続の可否判断は8月以降との見方が一般的なようだ。
なお、9日には、1日に中止された現金自動預け払い機(ATM)の防犯装置によってシミがついた紙幣の交換再開が発表された。ATMで引き出した紙幣にシミがついていた場合、ATM利用を証明出来る残高証明(エストラット)と共に銀行に持ち込めば、即座に交換してもらえる。