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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2011年6月14日付け

 記者嫌いは、師匠の吉田茂さんから受け継いだらしいが、佐藤栄作首相は、内閣を7年8ヵ月も運営し、沖縄返還という大きな仕事と非核三原則でノーベル平和賞に輝いた。中曽根康弘首相も長期政権であり、大勲位菊花大綬章を受章。小泉純一郎内閣も長く、ブッシュ大統領と親しく日米外交に花を咲かせ、郵政民営化を成し遂げると—さっと政界を引退し、引き際の美しさを見せ、拍手喝采であった▼ところが、この後の安倍晋三首相から福田、麻生、鳩山政権はほぼ1年で退陣という田舎芝居を繰り返している。そして—菅内閣もすでにレームダックであり、これまた短いのは、いかになんでも情けない。故・市川房江さんの選挙運動を応援し市民運動家から政界に転じた首相は「8月退陣」と語るが、耳を傾ける政治家はもういない。民主党幹部らも、既に「ポスト菅」を協議しているし、早期退陣は避けられまい▼それでも、短命政権ながら、安倍首相は、憲法改正への取り組みや教育基本法の改正という国家の基本となる法律を成立させた功績は大きい。だが—健康上の理由で辞職せざるを得なかったの手記を発表しているので—まだ救いがある。鳩山首相に到っては、普天間移設のとん馬ぶりや日米関係のぶち壊しと見るべきものは、ひとつもない▼そして今は、大震災の難問に直面し政界は厳しくも苦しい。もう「政治の空白」は許されないのに—民主党は後継者選びで大騒ぎばかりは侘しい。候補者らしき数人が「俺が」「僕は」と叫んで鵠立しているのは、将に—政権末期の哀れな舞台にも見える。11日付の十河は「そごう」の誤りでした。(遯)