ニッケイ新聞 2011年6月15日付け
国内消費の過熱に支えられて08〜09年の国際的な金融危機を早々と乗り越えたブラジルだが、市場関係者は今年の経済成長率は4%を割り、インフレも高進と予想していると14日付伯字紙が報じた。国内総生産(GDP)の4・5%成長を目標とする政府にとり、インフレ対策や金融政策の見直しが求められる事態となりそうだ。
中央銀行が毎週行っている動向調査Focasによると、市場関係者が予想する今年のGDPの成長率は3・96%で、ここ5年間では2番目に低いものとなった。
インフレなき経済成長を目標とするジウマ政権にとって、GDPの4・5%成長という目標達成は必須事項の一つだが、経済活動の減速化は政府が考える以上に迅速に起きているようだ。
中銀が8日に経済基本金利(Selic)引上げを発表した際も、サンパウロ州工業連盟などから経済活動減速化の動きの中での金利引上げかとの声が出ていたが、市場動向を分析する専門家達も、経済活動の減速化を認め、GDPの4・5%成長は困難と見始めている。
経済活動の低下は12日付エスタード紙や14日付フォーリャ紙も報じており、今年は3・4%の成長と考える経済コンサルタントもいる。
また、昨年は好調だった建築部門も、4月の建築資材販売が前年同月比0・96%増に止まり、年頭の9%増から7%増に下方修正していた販売見込みを、5%以下に更に下方修正した。
経済活動の減速化は、生産活動と販売実績の双方によって測られるが、12日付フォーリャ紙記載のダッタフォーリャ調査では、経済は悪化するとの予想が3月の9%から17%に増え、成長するとの予想は50%から42%に減っている。
同調査では、インフレ高進予想が3月の41%から51%に増え、現状維持の予想は42%から31%に減るなど、国民も経済状況の悪化を肌で感じ始めている事を表しているが、Focasでは、今年のインフレは政府予想の5・7%を上回る6・19%。来年も、4・5%まで引下げと発言している中銀の予想を上回る5・13%との数値が出ている。
市場では、インフレ抑制のためには経済基本金利の12・50%への引上げは必至で、金融、通貨政策の見直しも必要となると見ているようだが、官房長官時代、地球温暖化防止対策として温室効果ガスの排出削減目標を決める際も、年5%成長の線を崩せないと主張し、自分の任期中に、基本金利を実質2〜4%に引き下げると発言していたジウマ大統領にとって、また一つ頭の痛い問題が出てきたようだ。