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下院が入札簡便化を承認=W杯の準備促進目指す=資金の動きは不透明に?=「絶対無理」の声覆るか

ニッケイ新聞 2011年6月17日付け

 2014年のサッカーW杯やリオ五輪関連事業の遅れが取り沙汰される中、事業の迅速化を図るための入札簡便化を盛り込んだ暫定令が下院で承認されたと16日付G1サイトが報じた。

 14年のW杯地区予選は既に始まっており、W杯や五輪関連事業の遅れが行事の開催を妨げてはとの思いは政府も議会も共通で、W杯開催のためとの旗印のもとで提出された暫定令は、賛成272票、反対76票、棄権3票で承認された。
 W杯や五輪関連事業の入札簡便化は2010年中から審議され、現政権では5度目の挑戦で承認された。16日付フォーリャ紙には、15日夜承認された暫定令527の基本部分には、二つの大型行事関連事業については国や州、市が計上した予算額は公表しないなどの条項が直前に盛り込まれたとある。
 野党側から提出された修正案が28日に審議されるため、基本部分の変更もありうるが、暫定令では、事業の立案から実施までを落札者に委ね、会計監査は事業終了後のみという超簡便化が行われ、国や自治体が報告しない方が良いと判断した場合には、連邦会計検査院(TCU)でさえ、事業経費を掴めない可能性が出てくるという。
 承認されたままで行けば、落札金額が入札規定に記載された見積もり額以上か以下かさえ公表の必要がないというから、簡便化された入札は経費増大や汚職を招きかねないとの従来の懸念が更に強まるが、政府側リーダーは、W杯の開催確保が第一で、犯罪の温床とするための暫定令ではないと弁明している。
 一方、肝心なW杯準備については、16日付エスタード紙が空港整備は14年には間に合わないとの専門家の意見を掲載するなど、遅れを指摘するものがほとんど。
 民営化が既に打ち出された主要3空港ですら、14年までに工事完了の可能性はゼロと明言されたというから深刻だが、55億レアルが必要とされる空港整備以上に金がかかるのが開催12市の公共交通面の整備だ。
 12日付エスタード紙によれば、総額238億レアルに上るW杯関連経費中、118億レアルを占める公共交通部門(高速バスやモノレール、軽量鉄道の導入や、バス専用道路や高速道路の整備など)が順調に進んでいるのは12市中4市で、遅れ気味が4市、完全に遅れているが4市。
 56億レアルを占める競技場の建設や改修も予定より遅れている所が多く、今後の進捗状況が気がかりだ。入札簡便化が奏功し、W杯前に事業完了となったとしても、経費増大などの懸念が的中すれば、駆け込み工事で祭りは開催できたが後に残るは借金の山という南アフリカ大会の二の舞となる可能性も強くなる。