ニッケイ新聞 2011年6月22日付け
サンパウロ州立病院を巡る大規模な汚職事件摘発のため、サンパウロ州市警と同州検察局が展開中の『ヒポクラテス作戦』がテレビでも放映され、州スポーツ局長らが辞任したと20、21日付伯字紙が報じている。
汚職が摘発されたのはサンパウロ市から99キロのソロカバ市にある総合病院などで、当直勤務の実態もない医師らに給与が支払われていた他、機材購入などの入札でも不正が行われていたという。
20日付伯字紙の報道では約200万レアルが不正に支払われたとされていた汚職事件は3年間に及ぶ組織犯罪で、21日付G1サイトでは動いた金は500万レアルに上ると報じている。
検察の要請で16日に出た逮捕令状は13通。同日中に12人が逮捕され、事情聴取なども進められているが、21日付伯字紙によれば、事件関係者は50人に及ぶ可能性もあるという。
事件の中核にいたのは2008年10月〜2010年12月にソロカバ総合病院理事を務めていたリカルド・サリン容疑者で、実際には当直勤務を行っていないのに給与を受け取っていた医師や告発回避のための賄賂を受け取っていた人事関係者なども逮捕された。
同事件が告発されたのは2009年の事。19日にテレビで放映された盗聴の中に、神経外科医のジョルジ・パグラ州スポーツ局長やリカルド・タルデリ保健局コーディネーターの名前も出てきた事で、パグラ局長は19日付、タルデリ氏も20日付で辞任した。
勤務表にサインするのみで働きもせずに1万4千〜4万7千レアルを受け取っていた医師には、元理事の妻なども含まれている。汚職関係医達の勤務先としてはサンパウロ市やイタペビ市内の病院の名前も挙がっており、第三者のサイン利用で、週218時間(1日31時間)とか週90時間など、ありえない勤務記録が残っている医師もいる。
また、ステンレス製の機材購入費をチタン製の製品価格で落とす、事業やサービスを担当する業者選択のための入札公示前に落札者内定などの不正も行われていた事が判明している。
第一段階では直接不正に関わった人物の摘発を優先したという当局は今後、3年に及ぶ汚職で恩恵を受けたはずの人物も順次追跡する予定だ。
州政府要人も絡んだ大型汚職について質問されたジェラウド・アウキミン知事は、迅速な捜査と処罰を可能にするための対策を採る事を約束した上、パグラ局長は2009年当時、統一医療保健システム(SUS)関連のプロジェクト担当としてソロカバ病院と関係しており、州立病院当直医としての給与受け取りの事実はないが、疑惑捜査のためには局長職を辞した方が良いと判断した同氏の意向を汲み、辞表を受理したと説明。新局長就任までのスポーツ局長は、ジョゼ・ベネディト同局補佐官が代行する。