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日本の清掃理念をブラジルに=「この国の文化変える」=清掃ゴミ協会の吉村会長=東京五輪の教訓に学べ

ニッケイ新聞 2011年6月25日付け

 「日本式の清掃理念を当地に」という志を持って、ブラジル公共清掃及び固形廃棄物協会の(ABLP)会長に就任した吉村忠之さん(66、二世)が来社し、今年9月中旬にサンパウロ州サンジョゼ・ドス・カンポス市で予定されている全伯セミナーの告知をした。広島大学の朝倉淳(あつし)教授ほかスペインから2教授を招いて講演してもらい、世界から観光客が訪れる2016年のリオ五輪までに「ブラジルの文化を変える!」と張り切っている。

 「W杯や五輪で日本や欧米から観光客が来ても、車の窓からゴミを捨て放題な様子をみてショックを受けるでしょう。当地にも道路にゴミを捨てることを禁止する法律があることを誰も知らないし、フィルカルもいない」
 大手清掃・ゴミ処理会社Solvi社(06年までフランス進出企業、現在は当地資本)役員の吉村さんは、そう憤慨する。父親は広島県出身、母親はサンパウロ州カフェランジア市出身の二世だ。
 「だいたい、サンパウロ市は街路清掃に毎年4千万レアルもの大金を使って、文字通りドブに税金を捨てている状態。この金を学校に投資して、子供たちに街路へゴミを捨てないように教育し、教室も自分達で掃除するように躾たらこの国の文化自体を変えることができる」と論じる。
 さらに「公共清掃の考え方を学んだ子供が大きくなれば、道にゴミを捨てる親や親戚に注意をし、社会全体が変わっていく」と強調する。
 公共清掃の概念が知られてなかった南米で1970年、同協会はUSP教授らを中心に結成された。業界の代表団体として先進的な考え方を国内に紹介、普及する役割を担ってきた。吉村さんは3年前に会長に就任し、2年前はリオで全伯セミナーを実施した。その時、初めて日本から講師を呼んで講演してもらったが、「みなが感動して拍手が凄かった。今回も日本式をモデルとする方向で提案し、やることになった」と説明する。
 ルーラ政権最後の昨年、固形廃棄物国家計画(PNRS)が承認され、4年がかりで廃棄物処理を先進国並みの基準に改良していく方針が打ち出された。
 吉村さんは「東京五輪の4年前、1960年には東京の街路はゴミで一杯だった。でも4年間で都民の生活態度を変え、五輪にきた外国人観光客を驚かせたと聞いてます。当地でもそれをやらなくてはいけません」と力説する。
 共に来社したセミナーの協賛社サンスイの平崎靖之社長補佐は、「立派な考え方をもった日系人が出てきて嬉しい。この活動を盛り上げることを後援していきたい」と頬をゆるめた。