ニッケイ新聞 2011年6月28日付け
ブラジル日本文化福祉協会(木多喜八郎会長)が主催する「2011年度白寿者表彰」が26日午前9時から、文協大講堂で行われた。昨年度白寿を迎えていた6人を含め、今年の該当者は32人。本人出席の10人をはじめ、代理で訪れた親族、代表等15人が表彰を受けた。
「ありがたいことです」—。微笑んで言葉少なに語る百合ミノリさん(99、長崎、ソロカバ市在住)は自分の人生を振り返り、「ずっと仕事をやりとおしてきた」。家族で築き上げてきた農場は、今は子どもたちが後を継いでいる。
「長生きの秘訣は、楽しく過ごすこと」。佐々木幸さん(100、神奈川、マイリポラン市在住)は、キーボードで「仰げば尊し」など日本の曲を弾くのが楽しみだという。
「裕福に育ったけれど、関東大震災で全部焼けてしまった。19歳でブラジルに来た時は、言葉もわからなくて大変だった」
厳しいコーヒー農場の仕事、質の悪い米や豆の食事。ゼロからの再出発で辛苦を舐めたが、今では11人の孫に4人の曾孫を抱えて幸せに暮らす。
今回、受賞者を代表して記念品の贈呈を受けた吉岡ヲサメさん(99、京都、サンパウロ州ジョゼ・ボニファシオ市)は、食事を済ませると席を立ち、文協ビル館内を見学に行くほどのお達者ぶり。
日本に残した兄弟姉妹に先立たれたヲサメさんは、「100歳を迎えられたのは、ブラジルに来たおかげ」と家族に話しているという。
付き添った娘のスミコさんは、「母は、『苦労させて悪かった』とよく詫びていたけど、その時があったから今がある。母にはいつも感謝している」と誇らしそうに語った。
表彰式では、木多会長が「99歳という稀な高齢を迎え、元気な姿を拝見するのは慶賀の至りです」と祝辞を述べ、続いて大部一秋在聖総領事が「103年の移民の歴史で、99年を生きた皆さんは、日系社会の宝、希望の星です」と白寿者を称えた。
次に表彰状、記念品、金一封が一人ずつに贈呈され、個人の記念写真が撮られた。
代表して謝辞を述べたのは泉百吉さん(99、岩手、ミナス州モンテ・シオン市)は一歩一歩、ゆっくりと一人で歩いてステージ中央に立ち、「この度は私たちのために集まってくださり、ありがとうございます。これからもがんばって、また皆さんにお会いしたいと思います」と、堂々と感謝の意を述べた。
式典の最後に全員で記念撮影を撮り、その後貴賓室でお汁粉が振舞われた。
◎
今回の白寿者表彰を受けたのは以下の32人。
新垣カマ(沖縄)千葉イヨノ、比嘉マツ(沖縄)比嘉ウト(沖縄)檜垣八重子(愛媛)檜川佐都恵(広島)久山吉明(100・岡山)泉百吉(岩手)神保敏行(群馬)上村綾(100・新潟)葛山正一(兵庫)木屋藤二郎(山口)前川恭平(三重)舛永花枝(大阪)松本伊勢子(100・愛媛)宮本信雄(山口)村上保一(100・広島)村山房夫(佐賀)仲松弥英(沖縄)中村和彦(東京)西山琢美(広島)緒方ひろみ(福島)及川さと(岩手)太田正一(静岡)佐々木幸(100・神奈川)鈴木美智子(静岡)高橋啓一(岩手)高橋ミツ(新潟)横地トヨ(静岡)吉岡ヲサメ(京都)百合ミノリ(長崎)渡辺末義(100・香川)。敬称略。
なお、村山房夫さんおよび西山琢美さんは惜しくも表彰前に死去した。