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「軍政時代の書類存在せず」=ジョビン国防相衝撃発言=人権蹂躙実証する文書消滅=機密文書保持の必要性は?

ニッケイ新聞 2011年6月29日付け

 ジョビン国防相が27日、「軍政時代の文書は消滅しており、情報公開法がそのまま通っても何の問題もない」と発言したと28日付伯字紙が報じた。上院での情報公開法審議を前に、人権問題で永久機密とすべき文書はないとの発言は、新たな疑惑も呼びそうだ。

 2009年に提出された情報公開法が、最重要機密文書も50年を上限に公開という下院承認案通り裁可されるとの見込みは23日付エスタード紙などが報じたが、軍政時代の文書消滅発言は、公開、非公開とは別の次元の論議を呼びそうだ。
 ルーラ前大統領提出の情報公開法原案での最重要機密文書の非公開期間は、原則25年で期間延長を無制限に認めるとしていたが、下院が非公開期間の延長は1回のみとしたため、50年以上経つ文書は全て公開される事になっていた。
 ところが、大統領経験者であるジョゼ・サルネイ上院議長とフェルナンド・コーロル上議が、ジウマ大統領に全文書の開示は好ましくないと進言した事で、情報開示支持派だった大統領が、一部文書は永久非公開とする事を認める発言をし始めたと報じたのは13〜15日付伯字紙だった。
 その直後、ジウマ大統領は、国家の権限や隣国との国際的な関係保持のために機密を維持すべきと判断されるものの非公開案を支持し、下院で承認したままの案が通った時には一部差し止めて裁可ともいわれていた。
 ところが、20日のパトリオッタ外務相やジョビン国防相との会談後、大統領が下院承認案通り裁可する方向で意向を固めたと報じたのが23日付エスタード紙。同紙には、上院で修正しても下院差戻しの時点で50年を上限に公開という部分は復活するため、無駄な衝突を回避とあったが、国防、外務両相の永久非公開にこだわるべき文書は無いとの進言も背景にある。この進言が文書消滅と同意だとしたら、機密管理のミスや情報漏洩、果ては、文書隠滅の可能性が問題になる。
 国防相は、軍政時代の文書は残っておらず、国防省や軍には隠すべき事は何もないというが、22日付エスタード紙は、軍政時代の拷問に関する赤十字や国際法制委員会の報告書が6月にジュネーブから送られてきた事などを報じている。
 3千ページを超すという文書には、拷問は政治的手段でもあり、立ち会いの軍医が気付け薬などを使って拷問を長引かせた事、電気ショックや水攻めなど跡の残り難い方法の多用、夫婦同室、時には子供の面前で拷問にかけ、肉体的、精神的な苦痛を増し加えた例もある事などと共に、具体的な人名も記されている。
 政治犯として迫害されたり行方不明となったりした人やその家族、歴史家達にとり、軍政下の人権蹂躙の実態を示す文書消滅で、機密保持の必要なしとの国防相発言は納得し難い事だろう。