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欧州で入国拒否に遭うブラジル人=空港では3年連続世界一=金融危機で不法滞在は減少=外国旅行熱は高まる中で

ニッケイ新聞 2011年6月30日付け

 国際的な金融危機以降、外国人流入を制限する傾向が益々強まる欧州諸国の空港で、入国拒否に遭うブラジル人はまだ多く、ブラジルは2008年から3年連続入国拒否数世界一を記録したと28日付エスタード紙などが報じた。

 2010年中に欧州諸国の空港で入国を拒否されたブラジル人は、全体での入国拒否数の12%に相当する6072人。2位の米国人はブラジル人の3分の1というから、ブラジルがいかに突出した存在であるかが分かる。入国を拒否された人数最多はスペインでの1813人で、フランスでの673人がそれに続く。
 10年の入国拒否は、旅行の目的がはっきりしない、帰りの航空券不所持などの理由によるものが大半で、北アフリカ諸国での政変でチュニジアやリビアなどからの人口流入が増え始めた今年の欧州では、空港や国境での監視がより厳しくなる可能性がある。
 一方、国境管理などを担当するFrontexが統計を開始した08年から3年連続入国拒否数1位のブラジルも、10年の数字は08年より40%以上減。BBCニュース転載の27日付G1サイトなどによれば、09年比でも24%減だ。
 ブラジル人への入国拒否が減少した理由の一つは、08年の国際的な金融危機勃発と欧州諸国の景気回復の遅れだ。
 金融危機勃発当時、世界各国から欧州への不法入国者は16万人に上ったが、10年の不法入国者は10万4千人に減少。不法滞在者数も、44万8千人から38万人に減少したという。
 ブラジル人の場合、08年に不法滞在で捕まった人は3万人いたが、働き口が減り、欧州で稼いで一旗上げようとの夢がしぼんで帰国した人もいて、10年の逮捕者は1万3千人に減少。欧州全体での不法滞在者ランキングも、08年の3位から6位に下がった。
 一方、空港での入国拒否などと関係があるのは平均10%、外国人についてみれば40%という高い失業率。スペインは青年の半数が失業中で、ブラジル人の帰国希望者が数百人いるアイルランドでは無人化した街もある。
 雇用喪失でブラジル人の不法滞在者減少が目立つポルトガルとスペインなど数カ国は、巨額の負債を抱え、欧州連合(EU)をあげた支援を必要とする国もあるほどだ。
 4月にはチュニジア難民を乗せたイタリアからの列車をフランスが停止させ、国境警備も厳しくなったEUで、域内の移動の自由を認めるシェンゲン協約が見直された事は25日付フォーリャ紙なども報じている。
 外国旅行熱が昂じ、旅行者が外国で費やした金額は5月だけで16億6千万ドル、1〜5月総計では前年同期比45%増の83億3千ドルというブラジルだが、今後はブラジル人への見方が変わり、欧州の空港での入国拒否が減るか否かは未知数だ。