ニッケイ新聞 2011年7月1日付け
上院法制委員会が6月29日、任期の途中で党籍変更する議員は、新党への移籍であっても議員権を失うとの法案を承認したと6月30日付伯字紙が報じた。従来の選挙法では議員権剥奪の対象とならなかった新党への移籍が含まれた事は、カサビサンパウロ市長らの計画にも影響を与えそうだ。
上院が承認した新法案発効には下院の承認が必要だが、議席は党に属するとの最高裁判断に基づく法案承認に、カサビ新党の結成を喜ばない民主党(DEM)関係者らの意向が反映されているのは明らかだ。
カサビ氏が民主社会党(PSD)結成を明らかにしたのは2カ月前で、新党への移籍や支援を表明した政治家の中には、国会議員や州知事などそうそうたるメンバーの名も連なっている。
PSDの正式登録はまだのため、新党への移籍表明者達は今も現所属政党に籍を残しているが、移籍希望者や新党支持者には、労働者党(PT)からブラジル民主社会党(PSDB)に至る地域の取り纏め役的な政治家も加わっている事は6月27日付エスタード紙が改めて報道。州によっては、新党立ち上げと共に党所属議員が皆無となる可能性のある政党さえあるのが現実だ。
これに対し、新党結成の動きを快く思わないのはDEMを中心とした政治家達で、DEM内ではカサビ氏排斥の動きが表面化してきている。
これらのカサビ反対派にとり、民主運動党(PMDB)議員提出の党籍移籍の議員権剥奪を含む法案は渡りに船。原案にあった、連立関係を結んでいる政党への移籍は認めるとの条項は、任期の途中で党籍をコロコロ変えるのを承認する事に繋がると削除した上、新党への移籍も党籍変更を正当化する理由とはならないと明記した。
この法案がカサビ新党を念頭においていた事は〃暫定令カサビ〃と名付けられた事からも明らかだが、もう一人影響を受けそうなのがマリーナ・シウヴァ元上議だ。
2010年大統領選に緑の党(PV)から出馬し、決選投票でも堂々200万票を集めたマリーナ氏は、次回大統領選にも出馬する意向を固めているが、党執行部のやり方を不満とする同氏は、6月28日の支持者達との会合で、7月7日か8日に離党宣言をし、2013年に新党結成との考えを表明した。
会合後は欧州に飛び、現地の緑の党関係者と会談する予定の同氏は〃緑と市民権運動〃を継続させつつ新党結成に備えるが、当面はPVに残って職責を果たす同氏支持派が、新法案発効で移籍をためらう事態が起きる可能性も否定できない。
現存政党に不満を覚える政治家には魅力的な新党結成は存続の難しさという壁があるが、新法案発効となれば、党員確保にも大きな壁が出来る。