ニッケイ新聞 2011年7月7日付け
4日の為替相場が1ドル=1・554レアルと1999年1月19日以来の安値を記録した後、ギド・マンテガ財相がロンドンでドル安レアル高改善のために新たな対策を採る事をにおわす発言をしたと6日付伯字紙が報じた。5日の為替相場は1ドル=1・565レアルでひけたが、国内では、小売業者らにも為替不均衡を懸念する声が広がっている。
国際的な金融危機脱却のために米国が金融緩和政策を取って以来拍車がかかったドル安傾向はまだ収まらず、最近も6日連続でドルが下落し、99年1月の1ドル=1・558レアルに次ぐ安値記録という状態は経済閣僚にも重たい現実だ。
インフレ再燃が懸念され始めた昨年以降、経済基本金利引上げに伴う外国からの投資と外貨の流入増加を懸念する経済閣僚は、外国投資や国外での融資に対する金融取引税(IOF)引き上げなどを行ってきたが、それでも歯止めがかからないのがドル安傾向だ。
ドル安と実質所得増で外国旅行も容易になり、買い物専門ツアーなども組まれているブラジルだが、その反面、窮地に追い込まれているのは工業界。ドル安で製品輸出が困難になった上、消費過熱気味の国内市場に安い外国製品が入り、国産品より外国製品という人が増えれば、工業製品の販売伸び悩みは当然で、経費削減や製品開発などの生き残り策が必要となる。
一方、国内消費の伸びを支えてきたのは個人融資も含むクレジットの拡大で、5千レアル以上の借金を抱える人は、2004〜10年の6年間で250%も増え、2790万人に及んでいる。
ロンドンでの講演で、会場からの質問に、ブラジルでは消費過熱は起きておらず、クレジット拡大によるバブルの危険も無いと答えた財相は、国内工業保護のため、ドル安レアル高の改善が必要との見方を示し、新たな対策導入を暗示した。
また、アレッシャンドレ・トンビニ中銀総裁も同日、上院経済諮問委員会で、一般家庭の負債額は国際的に見ても適正な範囲で、債務不履行は横ばい状態となった後に減少との見通しを示すと共に、急激な外貨流入回避策をとると発言した。
債務の返済が90日以上遅れる債務不履行は、5月から6月に10・09%減ったが、それでも6月の債務不履行は昨年同月比6・9%増。今年上半期は前年同期比4・25%増で、5・05%だった小売販売額の伸びとほぼ一致との国内商店主連合の発表は、6日付エスタード紙サイトなどが掲載。同連合は、ドル安はインフレ抑制や小売販売拡大に貢献しているが、現状のままでは工業界への圧迫が生産業から輸入販売業への鞍替え、工業従事者の失業や所得減少という事態を招きかねず、小売業界にもマイナス要因となりかねないとの見解を表明した。