ニッケイ新聞 2011年7月8日付け
統一医療保健システム(SUS)で、既に死亡した患者の手術費や入院費などで1440万レアルもの不正請求が行われていた事が連邦会計検査院(TCU)の調査で判明したと5日付エスタード紙が報じた。SUSに関しては、昨年も死者の名前を使った医薬品販売が摘発されるなど、監査システムの改善が求められている。
会計検査院の調査で判明した不正は、2007年6月〜10年4月に請求があった9千人の患者の手術や入院経費で、その総額は1440万レアル。その他にも、入院中に死亡した患者890人についての不正請求もあったという。
死んだ人には入院や手術は不要なはずだが、摘発された事例の大半は、実際に入院したりしたものの、政府が定めた月々の払戻し限度額を超えないよう、病院が入院期間や施術日を改ざんした事で起きた不正だという。
今回の調査で指摘された不正は、請求された経費が既に死亡した患者に関するものだったため、死亡届けの日付と照合する事で判明したが、生存者や請求書の日付以降に死亡した患者に関しては照合が難しく、会計検査院は不正請求の数はもっと多いと見ている。
SUSを巡る不正としては、2010年11月に摘発された死者1万7千人に対する医薬品販売例もあり、巨額の金が動く同システム悪用の例は後を絶たない。
今回のような事例は、SUS傘下の病院の意図的不正という面と共に、死亡情報と請求内容との照合その他の防犯体制の欠如が原因で起きたもの。病院側は、遠方で情報交換が迅速に行われない地域では医薬品の配送が前倒しされるために起きた食い違いというが、それだけでは全事例を説明しきれない。
会計検査院が、度重なる不正発覚に「保健省の支出管理はずさんで、調べれば不正が次々に表面化するはず」と指摘したのは昨年の事。保健省関係者の「情報管理と照合システムは常に改善しているが不正が起きる可能性根絶は不可能」との発言は6日付エスタード紙が掲載したが、同種の犯罪は全国で起きており、病院に請求内容の真偽確認のためのスーパーヴァイザーを置くなどの処置の早期実行が必要だ。
請求した報酬が支払われず、医師や検査技師、看護士らが毎年のようにストを行ったり、手術のために何年も待たされたりする患者が無数にいるとされるSUS。各自治体でも、予算の12%は保健衛生関係費として確保するとの法令が守られておらず、2004〜08年に帳尻を合わせるために同関係費に計上された他部門の経費は全国で120億レアルに上る事は4日付フォーリャ紙が報じている。
サンパウロ州ソロカバ総合病院での汚職など保健衛生関連の不正摘発が続いているが、生活に密着する問題だけに、迅速かつ真摯な取組みが求められる。