ニッケイ新聞 2011年7月8日付け
「ブラジル料理の豊かさ、奥深さを伝えたい」——。4月からサンパウロ市ジャルジンス区のレストラン『ナ・コジ—ニャ』でブラジルの地方料理を学ぶため来伯している福島千尋さん(29、静岡)。すでに120種の料理を覚えた。「すごく吸収が早いよ」と目を丸くするオーナーシェフ、カルロス・リベイロ氏と日本料理のアイデアを取り入れた〃日伯料理〃も合作、期間限定だが、同レストランのメニューに載る。福島さんに話を聞いた。
静岡県菊川市に生まれ、身近にブラジル人の多い環境で育った。専門学校に入学、同時に浜松のホテルでアルバイト。卒業後そのまま入社し、レストランでの勤務のかたわら、調理師免許も取得した。
ブラジル料理との出会いは、在日ブラジル人の友人宅で食べたフェイジョンとご飯。「とてもおいしい!」と感激した。
ポ語を習った非日系ブラジル人から、レッスンの中で様々なブラジル料理について聞き、さらに興味が沸いた。
「現地に行ってみたい」——。しかし10日の休暇での初来伯は、友人との再会で終わった。
ブラジル料理への思いは止まず、今年4月に退職。ポ語の先生の紹介で、カルロス・リベイロ氏がオーナーシェフを務める『ナ・コジーニャ』で個人レッスンを受けることになった。
毎日、3皿の料理を教わり、レッスン後は厨房で実践。すでに120以上に及ぶ各地方の料理を学んだ。カルロス氏がパライーバ州ジョアンペッソア出身ということもあり、北東部の料理が多く登場したという。
先月は、福島さんのアイデアを取り入れた北部料理がメニューに載った。「シソ入り鴨とトゥクピ(マンジョッカ芋の絞り汁)の煮込み、ニラと椎茸のファロファ添え」は、好評だったという。
「キジと白米の煮込み日本風」は、コリアンダーの代わりにシソとニラ、酢の代わりにみりんと酒を使い、優しい味に仕上げた。
「ブラジルは多くの食材が溢れ、料理法も型にはまらないのであらゆるアレンジの可能性がある」と福島さん。続けて「日本では、ブラジル料理といえば肉、豆、くらいのイメージ。それを崩したい」と意気込む。
帰国は今月12日。「本当に多くを学んだ。日本では、手に入る食材でブラジル料理を作りたい」と笑顔で研究への意欲を見せた。
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カルロス氏、福島さん合作の北東部料理のコース『パライ—バの全て』(Paraiba do Mar ao Sertao)は、今月9日まで『ナ・コジ—ニャ』(Rua Haddock Lobo, 955, Jardins, 11-3063-5374)で食べられる(要予約)。