ニッケイ新聞 2011年7月12日付け
先にカダフィ大佐や11代将軍・徳川家斎の子女55人の話を書いた。そのなかにIMFの専務理事ストロスカーン氏のこともちょっと記したが、どうも—この醜聞はNY司法陣の判断の誤りが濃くなってきた。裁判所は前専務の自宅軟禁を解除し、600万ドルかの保釈金返済を決めたし、性的被害を告訴したギニア出身の女性の供述に疑問があるとまで発表している▼現地の新聞では、検察が「訴追の取り下げも検討」としており、この報道の通りならば、アメリカの大黒星となり、世上の批判も強まるに違いない。ストロス氏は、このスキャンダルを引責するかたちで専務理事を辞任したし、来年の仏大統領選挙に立候補するとされる最有力者でもあり、政界への影響力も強い。こんな背景もあり、政治的な謀略説が広まるなど—とにかく不透明なところが多い▼その後の捜査でギニア女性に不審な点が見つかり、薬物事件で逮捕されていた交際相手の男と電話で話している内容もおかしく、金銭的な動きも不自然さが目立つそうだ。それでも5月の拘束から解放されたストロス氏は、7月の朔に夫人とイアリア料理店に向かい美味を楽しんだが、これで事態が完全に終わったわけではない▼今度は仏の女性作家に、性的な暴力を受けたと提訴され、これもまた話題になっている。前専務は「否定」しているが、ことは裁判であり厄介なのは言うまでもない。などと—暫くは面倒が続きそうながらIMFの専務にはラガルトさんが就任し、ギリシャなどの難問や副専務に中国人を起用するなど一所懸命だから—ちょっと安心しているのではないか。(遯)