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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2011年7月13日付け

 サッカーと政治が密接に結びついていることは当地の常識だ。先日ラジオを聞いていたら現在アルゼンチンで行われているコッパ・アメリカが開催されている6蹴球場のある都市の首長のうち、4カ所がクリスチーナ大統領の与党に属すという。ここで亜国が地元優勝すれば、国民は現体制への好感を強める▼もちろん10月末には同国の大統領選挙だ。立候補表明したばかりのクリスチーナ氏の公約の一つは「テレビを全国民に」、つまりコッパを見てもらうことだ▼1928年の五輪のサッカーで実績をあげたウルグアイが初めてのW杯を同国に誘致して優勝したのが、南米におけるサッカーと政治の蜜月関係の始まりだ▼ブラジルの場合、優勝した代表選手団はまず大統領官邸に優勝報告に行き、大統領らとの記念撮影から国内の日程を始める。2014年に地元開催するW杯で優勝するかどうかで、当然その年の10月に行われる大統領選挙に影響する。勝てば現政権への支持が増え、負ければ苦戦が予想される▼だからジウマ大統領はW杯に向けて全伯で建設される蹴球場の入札や建設の詳細報告をゆるめる法案を可決させ、サンパウロ市のカサビ市長も開幕試合を行うイタケロン(コリンチャンス新蹴球場)の建設を特別支援する法的枠組を無理やり可決した。サッカーで国民的な不評を買うことは、政治家にとって致命的な失点になる▼調子を取り戻しつつある亜国代表に比べ、ブラジル代表はいまだ不甲斐ない状態。万が一このまま敗退すれば〃1億9千万人全員が代表監督〃と言われるブラジル民は黙っていない。この国でサッカーは単なるスポーツではないのだ。(深)