ニッケイ新聞 2011年7月20日付け
サンパウロ市では雨が降らない日が続いているが、サンパウロ総合大学(USP)の研究によると、気温や湿度が低下すると、大気中の汚染物質は基準値以下でも、呼吸器系疾患を起こして病院に運ばれたり死亡したりする人が増えると18日付エスタード紙が報じた。
大気汚染による健康被害が深刻なサンパウロ市で、呼吸器系疾患を引き起こすのは大気中の汚染物質だけではなく、気温や湿度の低下も発生頻度や重症度を左右するという研究結果が発表された。
大気中の汚染物質量に気温や湿度を加味した研究は、健康への影響を表す指数創設に向けた試みで、気温が17度以下になると呼吸器系疾患で入院する患者は62%まで増え、乾燥がひどくなると死亡率も上昇すると報告されている。
雨が少ない時期は市防災局からも異常乾燥に注意するようにとの警告が出され、屋外での運動などを制限するよう指示も出るが、今回のUSPの研究報告は、老人や子供の居る家庭では、大気汚染は深刻でない時でも、気温や湿度に留意する必要がある事を再認識させるものだ。
環境浄化技術公社(Cetesb)の基準によれば、大気中の汚染物質が56マイクログラム(0・056ミリグラム)/立方メートル(以下、μg/m3)の時の大気の状態は普通だが、平温時の喘息患者入院数の平均が108人/日であるのに対し、気温が17度以下になるとその数は143人/日で33%増。大気中のオゾンが76・9μg/m3で気温が17度以下になると、入院患者は175人/日で62%も増える。
また、大気中の湿度が10%になると致死率は0・26%から0・64%と3倍になる。サンパウロ市の観測史上最も乾燥していた2010年8月の場合、死因解明のため解剖した死者1252人中、17・7%に当たる212人は呼吸器系疾患が原因で死亡。高齢者ほどその傾向が強いという。
世界保健機構(WHO)では大気中の湿度は60%以上が適正で、30%以下は要注意としているが、2010年8月の場合、20%以下の日が11日あり、最低値は12%を記録。今年のサンパウロ市は17日まで20日連続で降雨がなく、17日の湿度は23%などの異常乾燥状態だ。
チリのサンチアゴや中国の上海、メキシコのメキシコシティーなど、大気汚染が深刻な所は、市内に乗り入れる車両数制限なども行うが、サンパウロ市の場合、大気の汚染状態や乾燥度が悪化しても規制強化などがない。
サンパウロ州はWHOの大気汚染物質量基準を3年以内に導入すると決めたが、入院患者が増えた時でも90μg/m3を超えた事がないリンの適正値は365μg/m3から60μg/m3になるなど、より厳しい基準が採用された時、気温や湿度も加味した健康指数も導入されているだろうか。