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為替一時1ドル=1.53レに=政府が新たな対策導入=外国直接投資が主な要因=経済効果は両面に表れる

ニッケイ新聞 2011年7月28日付け

 ブラジルの為替相場が26日に変動相場制移行後最安値となる1ドル=1・53レアルとなり、マンテガ財務相が27日に新たな対策を発表した。27日付G1サイトによれば新対策は同日付官報に発表され、27日の為替相場は午後1時過ぎの売りが1ドル=1・569レアルまで回復したが、27日付伯字紙は、経常収支赤字を補って余りある外国からの直接投資増加がドル安の主要因と報じている。

 26日のドルは一時、1・5284レアルまで下落しており、6日連続のドル安を嫌う中銀が4回介入を行なったにも関わらず、今年最安値の終値1ドル=1・53レアルを記録。1994年7月導入のレアルが変動相場制に移行した1999年1月15日以降の最安値ともなった。
 ドル安傾向を案じる声はあちこちから聞こえ、マンテガ財相も25日、現時点での最大の懸念は為替の動向と発言。近日中に新たな対策を採る事を示唆し、27日付伯字紙が同日中にも新対策発表と報じた通り、27日付官報には金融派生品への金融取引税(IOF)引上げが掲載され、27日のドルは前日比2%弱高めで動いている。
 このようなドル下落が生じた一因は、米国が債務問題解決に手間取っている事。8月2日までに何らかの処置がとられなければ同国初の債務不履行が生じ、予定していた金が入らないと慌てる国や人が出ると、国際金融機関なども勧告を出している状態だ。
 だが、それ以上に強い要因は、国外からの直接投資の急増。生産活動などへの直接投資が前年比84・6%増の484億ドルを記録した2010年は、国連の貿易開発会議による直接投資ランキングも15位から5位に躍進。上半期は中銀の統計開始以来最高となる325億ドルの入超を記録したが、証券などの金融投資は116億ドルで前年のほぼ半分だった。
 上半期に中銀統計で新記録を達成したのは直接投資の他、国民が外国旅行で使った金の119億ドルや、国外進出企業が現地で調達した機材賃貸料の78億3千万ドル。
 国外で使う金の増加は経常収支悪化も意味し、上半期の経常収支赤字255億ドルも新記録。だが、6月までの12カ月累計489億6500万ドルは昨年より減り、直接投資額が経常赤字額を完全にカバーしている。
 ただ、直接投資が経常収支の赤字を埋めてくれたと安心するのは健全ではなく、コモディティ価格高騰による貿易収支改善後も続く経常収支の赤字は懸念材料だ。
 ドル安は、輸入製品価格下落に繋がり、インフレ抑制要因となる一方、工業製品などの輸出を妨げ、国際的な競争力をそぐため、経済減速化にも繋がる。2014年ワールドカップや2016年リオ五輪などで国外からの投資流入も続くが、庇(ひさし)を貸して母屋を取られる事にならない様な配慮も必要となる。