ニッケイ新聞 2011年7月30日付け
サンパウロ市検察局が、薬物を常用する浮浪児(ストリートチルドレン)に対する強制入院プログラムについての提案書をまとめ、市長に提出したと29日付エスタード紙が報じている。
市長に提出された強制入院プログラムは、既にリオデジャネイロ市が導入したものと類似しており、浮浪児の保護、審査、裁判所での決断の3段階に分かれる。
クラウジオ・レンボ法務局長によると、プログラム導入についての調査や法的な問題解決は終わり、導入の可否はジルベルト・カサビ市長の判断を待つのみという。
強制入院を支持する法的根拠は二つあり、一つは法的無能力者である未成年者に入院するか否かの選択権を与えないという点。彼らは保護者である親の判断に依存する立場というのが検察側の言い分だ。
二つ目は薬物中毒者も法律では法的無能力とみなされる点で、プログラムでは、中毒者の意思とは関係なく、精神科医の審査を受けさせることができる。
強制入院に至る最初の段階では、社会福祉士が路上で生活する子供が浮浪児かどうかを確認して保護する。本人が抵抗した場合何をすべきかは福祉士によって判断され、最初から力尽くで連行することはない。
第2段階は浮浪児の審査で、社会福祉局は、家庭環境に戻すことを優先し、親の保護能力も加味しつつ方策を検討。保護者の有無や所在を確認する間、保健局指名の医師が、浮浪児が中毒者か否かの診断を行なう。
保護者と連絡が取れない時や家庭環境が適切ではないと判断された上、浮浪児が薬物中毒者とみなされた場合は検察局へ送られ、裁判所で強制入院の決断が下される。いずれの場合も、強制入院には裁判所での決断が必要とされる。
カサビ市長が既に強制入院プログラムに関する提案書を受け取ったことは市報道官が明らかにしているが、同市長がプログラムを採用するか、検察側の提案通りの内容を認めるかについては何もコメントしていない。
一方、5月30日に同様のプログラム導入を発表したリオ市では、6月3日〜7月19日に市内クラコランジアで51人の浮浪児を保護。市内4施設では、現在81人の中毒者が入院治療を受けている。裁判所の児童及び青年担当者や検察官は同プログラムを支持しているが、人道主義者は反対を唱えているという。