ニッケイ新聞 2011年7月30日付け
サンパウロ日伯援護協会(援協、菊地義治会長)の7月定例理事会が29日、サンパウロ市リベルダーデ区の援協会議室で行なわれ、〃最後の支援〃として特別資金の提供を申し出ていた日本国際協力財団理事長の神内良一氏に提出する事業案が承認された。その一つ、国が運営する健康保険制度(SUS)を使った治療が受けられる病院新設の交渉開始については、先月の理事会で承認されており、菊地会長が概要を説明した。建設予定地のサンミゲル・アルカンジョ市との契約は、来月初旬には成立する見込み。来年に迫る公益社会福祉団体としての認可更新が目的。
聖南西地区のサンミゲル・アルカンジョ市内に建設予定。約1万3千平米の土地を25万レアルで購入する話が進んでおり、理事会で購入が承認された。
建設工事費として150〜200万レ、設備費として150万レ前後が見積もられている。
建設は2期に分け、1期3年計画。1期に40床の平屋の病院を建設、内科、外科、小児科、産婦人科の入院のみ扱う。
2期に60床を増設、高度の手術・入院も受け入れることで黒字経営を目指す。
同市では08年4月、入院施設のある唯一の病院が閉鎖されて以降、市からの強い要望と援協の必要性が合致、交渉が進められていた。
建設委員会のメンバーも承認された。委員長を菊地会長、副委員長を毛利連第一副会長が務め、同市の森エリオ市議会議長、同市近郊のピニャ—ル移住地の西川修治文体協会長、同市文協の小田原カズオ会長らを含め14人で構成される。
免税が許される連邦慈善団体登録を維持して活動を続けるには、「病院の定員ベッド数の約6割をSUSで受け付ける」か、「年間収益の2割以上を公益事業に無料で奉仕する」ことが必要。
後者を選択すると病院が赤字経営となり、維持が困難と想定されたため、SUS病院の経営を決めた。
具志堅茂信事務局長は、「日系団体である援協が、非日系人も多く扱う病院を経営することで、日系社会の評価に繋がる」と強調する。
さらに、SUS病院とは別に、精神障害者デイケアセンターと自閉症児療養学級を併設した施設、リハビリセンターを併設した長期入院患者病棟の新設の案が作成され承認された。
「合わせてこの3つの事業を運営して初めて公益団体認可が下りることになる」と菊地会長。神内氏は検討の後、いずれか1つの事業に対して援助する意向だという。
SUS病院の定礎式は9月23日に決定。菊地会長は、「11月には神内氏から事業案の承認を得て、援助を受けられれば」と展望を話した。