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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2011年8月2日付け

 中国の技術水準はかなり高い。取り分け軍事的なものは衛星や核兵器を始め海軍では航空母艦の建造を本格化するなど世界の先進国と肩を並べる。長さが42キロかの世界一の海上橋「青島海湾大橋」も造り、鉄鋼や造船能力も凄い。所得配分の格差は広がるばかりながら—世界2位の経済大国になり、共産党と政権は鼻高々。だが—あの高速鉄道の追突事故は、いみじくも技術的な低さを露呈した惨事と見ていい▼鉄道の敷設と改善は中国の重要政策であり、先頃は北京と上海を結ぶ夢の高速鉄道が完成し大騒ぎしたが、次々に故障が起こり批判の的になり、鉄道省のトップが巨額横領の醜聞も明らかになっている。あの事故では、人的な犠牲者はなかったが、先の浙江省温州の追突事故では40人が死亡し胡錦濤主席と温家宝首相が仰天したそうだ▼温首相は7月28日に現地を訪れたが、上海鉄道局長は、「落雷による天災」としたこれまでの事故原因を「人災」と訂正発表するなど、どうも—おかしなことばかりが続く。事故の直後に脱線した車輌に土を掛けて埋めるという暴挙があり、中国でも猛烈な非難が巻き起こったし、日本の専門家も「あれでは事故原因の調査ができない」と首を傾げるなど不審なことだけが次々に—▼あの広大な領土を誇る中国が、物資や人の輸送に鉄道を整備するのは、大いに結構なことだし、北京〜ラサの4千キロを超える青蔵鉄道は驚異に尽き、5千mもの山を走る列車は素晴らしい。だが、こんな魅力に満ちた鉄道も、技術的な見落としのないように—と、中国のお偉い人にお願いしたい。(遯)