ニッケイ新聞 2011年8月3日付け
日本のキリンホールディングスが1日(日本時間2日)、ブラジルビール大手のスキンカリオール・グループを買収と2日付伯字紙が報じた。キリンの世界戦略の一環だが、39億5千万レアルを投じ、同グループ株式の50・45%を取得した同社には、同グループ親族間の法廷での争いといった壁も立ちはだかりそうだ。
ブラジルビール業界第2位のスキンカリオールは、2010年の売り上げを前年比11・8%増の57億レアルに伸ばした成長企業。キリン側は買収に伴う負債増より、人口の多い成長市場への足場確保を優先した世界戦略をとったようだ。
ブラジルは中国、米国に次ぐビール消費国。昨年の生産量は120億リットルだが、一人当たりの消費量は年平均48リットルで、一人110リットルを消費するドイツなどと比べると小規模。先進国の消費が縮小する中、新興国での消費は拡大しており、ブラジル市場も年10%は継続して成長すると見込まれている。
そのようなブラジルでのスキンカリオールは売り上げの約8割をビール、残りをその他飲料で占めており、ビールの国内シェアは11・2%(フォーリャ紙は10・97%、以下エスタード紙の数字を採用)で2位。1位はAmBevの69%で、3位がペトロポリス9・5%、4位がハイネケン8・1%。
キリンによるスキンカリオール買収は、最大株主のアレアドリ・スキンニ・パルティシパソインス・エ・レアルプレゼンタソインスの持ち株買取りの形で行なわれた。
同グループは、1939年にイタリア系のプリモ・スキンカリオール氏がサンパウロ州イツー市内の自宅奥でカカオのリコールやカシャッサ、グロゼーリャなどを作り始めた事に始まる100%国内資本の会社で、アドリアノ、アレッシャンドレ・スキンカリオール兄弟がグループ株式の50・45%、いとこのジウベルト、ジョゼ・アウグスト・スキンカリオール両氏が残り49・55%を所有していた。
アドリアノ氏達の持ち株売却の話はしばらく前から出ており、SABミラーやハイネケン、いとこ達が関心を示していたが、1日に招集された緊急会議で、よりよい条件のキリンに株式売却と聞いて収まらないのは、株式購入の優先権は自分達にあると考えていたジウベルト氏らだ。
従来はアジア・オセアニア中心に事業を展開してきたキリンが南米への戦線拡大の意向を表明したスキンカリオール・グループ子会社化は、当面はアドリアノ社長らの経営陣をそのまま残し、ノヴァ・スキン、デヴァッサ・ベン・ロウラ、バーデン・バーデンなどの銘柄も温存して進められるが、伯字紙は、裁判で争う構えのジウベルト氏らとの調整、文化や好み、従業員気質が違うブラジルでの生産活動などで苦労が続くと見ている。