ニッケイ新聞 2011年8月6日付け
2007年のTAM機墜落事故後、混乱収拾のため国防省トップに就任し、3軍の長とも良好な関係を築いて来たネルソン・ジョビン国防相が4日夜、ジウマ大統領に辞表を提出と5日付伯字紙が報じた。新政権発足から7カ月余りで3人目の解任劇の原因はここ5週の同氏の言動で、後任にはセウソ・アモリン元外相が就任する。
「あなたが辞表を提出するか、私が一緒に閣外に去るかよ」—。コロンビアとの国境警備に関する計画発表のため、アマゾンに居たジョビン氏のもとに大統領からの電話が入ったのは4日午後3時過ぎの事だった。
ミシェル・テメル副大統領やジョゼ・エドゥアルド・カルドーゾ法務相らとアマゾンに居たジョビン氏は、単独ブラジリアに戻り、8時頃大統領官邸に到着。大統領との会見は僅か5分で、一身上の理由で職を退くと記した辞表を提出し、「あなたの下で現政権に関われた事を光栄に思います」と言い置いて官邸を後にした。
カルドーゾ政権で法務相、最高裁判事を歴任、ルーラ政権では最高裁長官も務めた後、混乱していた航空行政を取り仕切るため07年に国防相に任ぜられた同氏は、軍出身ではない民間初の国防相でもあった。
1987年の下議当選以来、第一線を歩き続けてきたジョビン氏だが、昨年の大統領選後、国防相交代を考えていたジウマ氏を、3軍の長と良い関係を築いており真相解明委員会開設にも力になると説き伏せたのはルーラ前大統領だった。
ところがここ5週間、カルドーゾ元大統領の80歳の祝いの席で労働者党批判ととれる発言をしたり、大統領選ではセーラ候補に投票した事を明かすなど、大統領の逆鱗に触れる言動が続いた。
セーラ氏に票を投じたと明かした事については3日に大統領に謝罪したが、その時は年末か年頭に解任と考えていた大統領に即刻解任を決断させたのは、4日発売の雑誌「ピアウイ」に掲載された同氏の発言だった。
機密文書公開などを巡り自らも調整に走るジョビン氏を取材した記者に「イデリ・サウヴァッチ関係調整長官は(交渉力が)弱く、グレイシー・ホフマン官房長官はブラジリアを知らない」「政府にはジェノイノ元下議の様な補佐役が不足」と答えたと耳にした大統領は、雑誌を取り寄せて確認後、昼食会で解任決断を明らかにした。
アマゾンでは「雑誌記事は文脈から外れており、言葉尻だけ捉えたもの」と弁明したジョビン氏だが、3日の会見で謝罪を受けた直後に報道された自ら選任の閣僚批判は、大統領を立腹させて余りあるものだった。
連立与党最大の民主運動党(PMDB)所属という事もあり、テメル副大統領にも連絡後に帰還命令を出した大統領が選んだ後任はアモリン氏だが、軍関係者は「同じ民間でも元外交官では」と渋面を隠さない。