ニッケイ新聞 2011年8月9日付け
世界的な信用格付会社の一つであるスタンダード&プアーズ(S&P)が米国国債の信用格付けを引き下げた事などを受け、8日の証券市場は、イタリアとスペイン以外は軒並み下落。世界経済の先行き不透明感が強まり、サンパウロ証券市場(ボヴェスパ)は8日午後3時現在9%以上暴落している。
S&Pが米国国債の信用格付けをAAAからAA+に引き下げを発表したのは5日。格付け引下げ後初取引が行われた8日は、世界各国の証券市場が軒並み下落したのに合わせるかのごとく、ブラジル市場も5%以上の下げ幅を記録している。
米国の信用格付け引下げ発表は、同国の雇用状態改善などの報告を受けて好転するかに見えた5日の証券市場を直撃。米国の国債に勝る投資先はないと言う専門家や同社が数字を読み違えた結果と反論する米国の経済スタッフの声とは裏腹に、世界経済の不透明感はいや増したようだ。
格付け引下げ後初の取引が行なわれるのは日本で、東京市場での取引開始直前の7日夜(日本時間では8日朝)、先進国財相や中銀総裁らによるG7電話会議も行なわれたが、決定的な方針が打ち出されないまま、世界的な下落が再開した。
アジアとヨーロッパの市場取引が、軒並み下落という結果で終わる中、唯一の例外となったのはイタリアとスペイン。これは、G7の財相・中銀総裁による協調行動確認の声明を受けた欧州中央銀行が、世界的な金融市場の負の連鎖を断つために両国国債買入れに乗り出した結果だ。
アジア、欧州と続いた下落傾向は、ブラジルにも影響を及ぼし、ボヴェスパ指数は、8日午後3時20分には9・75%という大暴落を記録し、取引停止寸前になった。
6日付フォーリャ紙などによれば、ブラジル政府は世界的な景気後退が再来してもブラジルは08年以上に耐性があると強気。景気後退はインフレ抑制にも繋がるため、経済基本金利(Selic)引上げも当面不要と見る一方で、経済成長率の落ち込みを懸念している。
S&Pは、今後の米国の動き次第では6カ月〜2年以内に更なる引下げもありと言うが、国別の米国国債購入額世界4位のブラジルは、今回の格付け引下げでも国債売却の意思はなく、外貨準備もドルで続ける意向。
経済の先行きを不安に思う投資家が株を売却して、格付けが落ちてもなお不安定感の少ない米国国債や金の購入に流れる傾向は世界的で、8日午後3時現在のボヴェスパ指数は、9・43%下げた4万7956ポイントを記録。同時点のドルは少し持ち直して1ドル=1・607レアルとなったが、9日の会議で米国が更なる金融緩和政策を採れば、再びドル安となり、コモディティ価格下落と共にブラジル経済を圧迫する事にもなりそうだ。