ニッケイ新聞 2011年8月9日付け
2万人超の死亡と行方不明者を出した大震災は、最大の被害を被った宮城県でも復旧が進み、日々の暮しも将来への明るさが見え始めたのは喜ばしい。新幹線や高速道路も使えるし、沿岸の瓦礫対策も進んでいる。被災地では津波などで命を失った方々の発見や災害復旧に献身した陸自第6師団(久納雄二師団長)も宮城県の村井嘉治知事らに感謝され住民らの拍手に送られながら撤収した▼この歴史的な震災は、尊い人の命もだが、25兆円とも試算される大津波と地震の被害は大きい。震災が起こってからの菅内閣の対策が後手になるの批判もあるし、福島原発の事故という厄介な課題もある。先に賠償支援機構法が成立し、放射能の災禍に苦しむ人々を救う制度が整ったが、この悲しい事故の解決には数十年も掛かるし、その影響も計り知れない▼放射能に蔬菜が被爆し出荷停止になり、飼料の稲束がセシウムを多量に含むために肉牛が殺処分や出荷を禁止されてもいる。そして—主食であるコメも、危なっかしくなり福島や宮城を始め19都府県が、刈り取った玄米を検査するという最悪事態にまで達している。農林省では、調査地点は3000ヶ所とし、一点でも汚染があれば、地域の出荷を禁じると厳しい。だが—農家にとっては何ともやるせない▼もっと面倒なのは、事故発生の原発の廃炉である。この難問を検討している専門家らは「米スリーマイル原発よりも高度の技術が必要」とし、10年単位の時間が掛かると課題は尽きない。と、大震災の復興には、莫大な資金と時間が要る現実を見落としてはなるまい。(遯)