ニッケイ新聞 2011年8月24日付け
リビアのカダフィ政権が崩壊間近と伝えられる中、反体制派が22日にブラジルに制裁を科すと脅しをかけたと23日付フォーリャ紙が報じた。3月の国連安保理事会でブラジルが対リビア武力行使容認決議案採択を棄権した事で、ブラジル企業は巨額の損失を被る事になりそうだ。
40年余り独裁政権が続いたリビアの首都トリポリを反体制派がほぼ制圧した22日、同国の石油関連会社Agocoが、新政権はブラジルやロシア、中国を貿易関係から除外する可能性ありと脅しをかけてきた。
Agocoは反体制派側企業の一つで、この脅しは、3月17日の国連安保理事会が対リビア武力行使容認決議案を採択した際、ブラジルなどが棄権した事に対する報復処置だという。
国連安保理が採択した決議案は、リビア上空の飛行禁止空域設定などを盛り込んだもので、同決議案承認後、米英仏などは、反政府勢力の拠点への攻勢を強めていたカダフィ政権に対する空爆などの武力行使を始めた。
この決議案は、飛行禁止空域の設定はアラブ連盟との協力の下で行い、欧米軍による同国内占領もない事を明言。資産凍結は、カダフィ大佐の側近やリビア中央銀行まで拡大された。
〃アラブの春〃と呼ばれる政変が続く北アフリカや中東諸国の中でも、体制側の攻勢の激しさが目に付いたリビアだが、首都トリポリも8割がた制圧した時点で発表された報復宣言は今後の同国との通商関係に大きく影響するものだ。
同国で営業するブラジル企業の筆頭は、2005年から地中海の石油採掘を行っているペトロブラスで、政変勃発後は営業を一時停止している。
政変勃発時23億ユーロ(53億レアル)の契約事業遂行中だったオデブレヒトや、ケイロス・ガルヴォン、アンドラデ・グタイレズといった建設会社も影響を被る可能性が高い。
ブラジル政府は、反体制派がカダフィ大佐の住居があるバーブ・アジジヤ地区を除く全域を制圧した22日になっても、反体制派政権を認める立場を明らかにせず、アラブ連盟などの動向を見て判断すると発表したのみ。
反体制派はバーブ・アジジヤ地区を23日に制圧し、政権側の反撃も停止との情報は23日12時過ぎのG1サイトなどで流れたが、カダフィ氏拘束などの情報はまだなく、北太平洋条約機構や米国国防省も完全制圧までは予断を許さないとの見方を保持している。
政変勃発から6カ月以上を経た首都陥落で、アラブ連盟やエジプト、ナイジェリアなどは23日までに反体制派審議会を新政権と認める意向を表明。ブラジル政府は22日、当面はカダフィ政権が派遣した駐ブラジリア大使を同国外交官として正式に認知すると発表すると共に、新政権についてはアラブ連盟などの決定に倣う意向を表明済みだ。