ニッケイ新聞 2011年8月27日付け
パラグアイ国アルトパラナ県のイグアス移住地入植50周年記念式典が22日、現地で盛大に執り行われた。同国における最後の日系移住地建設にして、最大規模の8万7762ヘクタールを誇る。いまや全パに広がった不耕起栽培発祥の地であり、遺伝子非組み換え大豆を日本に輸出するなどの営農で活路を見出し、2000年以降にも新規移住者が入るなど日本との絆の深さを持ち、半世紀をへてなお独特の存在感を強めている移住地といえる。加えてパラグアイ建国200周年、最初の移住地ラコルメナ入植から75周年という記念すべき節目も共に祝った。
当日はアンデス下ろしによるあいにくの雨模様で、室内でも10度程度の厳しい寒さだったが、約1千人の関係者がスポーツ文化交流センターに駆けつけた。
井上幸雄式典執行委員長による開会宣言のあと、在エステ国家警察音楽隊が両国歌を演奏するのにあわせ、全員で斉唱した。
イグアス日本人会会長の福井一朗祭典委員長はあいさつの中で、1961年8月に国内の移住地から14家族が第一陣として入植して基礎を固め、その上で日本からの入植者に繋いだ歴史をふり返った。さらに東日本大震災の後、同地産の大豆から作った豆腐100万丁を被災地に送るプロジェクトを進めていることを報告し、「届けられて嬉しい。いつまでも日本と共に歩んで生きたい」と感無量の様子でのべた。
久保守イグアス農協組合長も「険しい道のりだった」と過去を総括し、「課題は多い。より豊かな移住地となるために更なる努力が必要」と決意のほどを明言した。
ロベルト・ラミレス市長は「家族を引き連れて移住するという勇気ある日本移民の行動には、どんなに感謝しても感謝しきれない」とのべ、ネルソン・アグイナガルデ県知事も「日本移民の行動は全国民の模範である」と讃え、「ビバ、イグアス!」と締めくくった。
渡部和男在パ日本国大使は、ルーゴ大統領が「パ国が15・3%という高い経済成長率を誇る一部は日系移住者のおかげである」と何度も演説の中で賞賛したことを引き合いに出し、「その言葉を聞き、大変感慨深いものがあった。我々はこの貢献を続けていく責任がある」とスペイン語、グアラニー語でも語った。
JICAの小林正博中南米部長も「パラグアイが親日国になったのは日系社会による貢献のおかげ」とし、同日本人会連合会の小田俊春会長は「次の半世紀は、日系が地域社会と共通の意識をもって住民全体の文化向上を図る、第2期開拓に向かうのでは」と次なる目標を問いかけた。
高知県知事、岩手県知事、鹿児島県知事、ボリビアのサンファン農協組合長、東京農大学長、オイスカ総裁などからの祝電が披露され、12人の学生と共に出席していた鹿児島大学の吉田浩己学長から伝統工芸品の酒器と杯が贈呈された。
続いて先発隊として開拓に入った官沢忍、高田伝太郎、大江登3氏をはじめ、第1陣入植者、高齢者、元会長や役員、元農業組合長、歴代市長ら126人の功労者に感謝状と記念品が渡された。
受賞者を代表して官沢さんは「開拓は一朝一夕にしてならず。辛抱強く生涯をかけられる仕事を持てたことに感激しています」と謝辞をのべた。
最期に司会の園田八郎(やつろう)さんが「文化交流センターの完成」「三井物産環境助成事業のイグアス湖周辺植林」などの50周年記念事業を発表した。婦人会による手の込んだ昼食に来場者は舌鼓を打ち、午後3時半まで若い世代が中心になった和太鼓やYOSAKOIソーランなどの芸能を楽しんだ。