ニッケイ新聞 2011年8月31日付け
30、31日開催の通貨政策委員会(Copom)を前に、ギド・マンテガ財相が基礎的財政黒字目標の100億レアル引上げを発表したと30日付伯字紙が報じた。市場では、31日にも政策基本金利(Selic)引下げとの見方もあるが、財相は、政策金利引下げは中銀が可能と判断した時点でと釘を刺した。
29日の政策審議会で国の基礎的財政黒字目標を818億レアルから918億レアルに引上げを決めたとのマンテガ財相の発表は、市場でも好意的に受け止められ、一部投資家には政策基本金利の早期引下げへの期待感も広がった。
基本金利引下げの可能性については、労組関係者と同日朝会談を持ったジウマ大統領も言及。国内最大の消費者である政府が黒字目標を引上げた事は、支出抑制がまだ続く事も意味し、インフレが低下すれば、金利引下げの可能性も高まる。
欧米諸国や日本などが景気後退の様相を呈している事で、ブラジルがどのような対応をとるかと注目されている最中の基礎的財政黒字目標引上げは、未払い分の税金回収も含め、好調な税収を背景としたもので、経済危機表面化直後に発表された対応策具体化の一例だ。
08〜09年の国際金融危機の時は、減税処置と国家支出拡大で国内消費をあおった財相が、上院の公聴会で、今回の危機は政策金利などの通貨対策を軸に緊縮財政を維持したまま乗り切ると発言したのは23日。29日の発表もこの線に沿ったものとなった。
ただし、政策基本金利の管理は中銀の責任で行われるため、マンテガ財相も、基本金利引下げは政府が主導するものではなく、中銀が可能と判断した時点で実現すると釘を刺した。
ブラジル政府の緊縮財政政策は経済活性化計画も含む政府支出の大幅削減を生み、国会議員からは、自分達が提出した事業計画への払出しが遅れている事などへの不満が出る原因ともなっているが、好調な税収で州や市も含めた基礎的財政黒字目標1180億レアルの約80%を達成した時点で目標を1279億レアルに引上げた事は、年間を通じての黒字積上げ継続を意味する。
換言すれば、政府側は年末までの歳入を新たな支出に回さないと公言する事で、議員立法分や公務員給の引上げなど、議会でのインフレに繋がる支出拡大要求を拒む姿勢を見せた事になる。
その意味で、ABC地区金属工給の10%(実質5%)調整や、パラナ州の自動車メーカーがインフレの20%超での調整合意などの報道は、政府側の脅威の一つ。公務員や軍人の年金など、社会福祉部門だけで570億レアルの赤字という現状では支出抑制は必至だが、労組関係者を満足させる一方、選挙年を前にした議員達の不満とインフレを抑えつつの政局運営は容易ではない筈だ。