ニッケイ新聞 2011年9月2日付け
パラグアイから豆腐100万丁を東日本大震災の被災者のみなさんへ——岐阜県の食糧確保計画に呼応した非営利民間団体(NPO)ギアリンクス社(岐阜県中津川市、中田智洋社長)が、イグアス移住地で生産された大豆を使って豆腐を作り、被災地に届ける事業を4月から遂行している。パ国、イグアス農協、パラグアイ日本人会連合会が中心になり同社が窓口になって実施中だ。8月22日のイグアス移住地創立50周年式典の会場で中田社長に話を聞いた。
「4月14日に配りはじめ、もう30万丁をお届けした。月間10万丁お渡ししている。残りも近いうちに必ずお届けできるはず」。中田社長(61、岐阜)はそう力強く言いきった。
同式典で駐日パラグアイ前大使の田岡功さんは乾杯の音頭をとり、「ギアリンクスを通して100万丁の豆腐が被災地に届けられているのは、南米移民の歴史の中でも異例なこと」と位置付けた。今年6月に東京で開催されたパ国独立200周年イベントに出席したおりに、被災地まで豆腐を届けに行った福井一朗イグアス日本人会会長(岩手出身)も、「現地の実状に胸が痛んだ。イグアスの大豆で作った豆腐を届けられて本当に嬉しかった」と語った。
この豆腐はイグアス農協から輸出された非遺伝子組み替え大豆100トンを使って日本で豆腐に加工され、被災地に送られている。パッケージにはパラグアイと日本の国旗の間に「心は一つ」とデザインされている。
豆腐製造の総費用は5千万円。内訳はパラグアイからの大豆原料代を含む2千万円、残り3千万円は日本国内からの趣旨賛同支援金や、中田さんが経営する別会社「ちこり村」の協力施設での豆腐販売益を充てている。
中田さんは、「被災地ではパンや缶詰とか保存の効く食糧の配布が多く、豆腐を持っていくと『まさか豆腐が食べられるとは思わなかった。しかもパラグアイから』と言ってもらえ、とても喜ばれました。お礼状がどんどん会社に届いている」と報告する。
福島県の仮設住宅で暮らす70歳男性からの礼状には、「天災と人災のために家も畑も失い家族もバラバラになってしましました。(中略)何の希望もなく枯れ果てる自分がここに居ることが信じられない」としたためられ、最期に「お豆腐ありがとうございます」と大書きされている。
ブラジルからも6億円超の義捐金が送られたが、他の南米日系コロニアからも特長ある支援が続いている。