ニッケイ新聞 2011年9月6日付け
広大な国土とサトウキビ(カナ)栽培に適した気候などで、世界で唯一エタノールの自給と輸出が可能といわれたブラジルで、収量減少、生産コストの上昇などの問題が起きていると5日付エスタード紙が報じた。2008年の国際的な金融危機の影響が、今頃になって表面化している。
世界一の砂糖とエタノールの生産・輸出国といわれたブラジルで、2009年までは最も安価なバイオ燃料とされたサトウキビからのエタノールが世界一の座を譲り、米国からの輸入も急増という事態に直面している。
エジソン・ロボン鉱山動力相が8月29日に10月からのガソリンへのエタノール混合率引下げを発表した事は2日付本紙でも既報。8月28日付エスタード紙は、ブラジルの砂糖・エタノール業界は、2011/12農年のサトウキビ減収予想も含め、過去11年で最悪の状況と報じている。
5日付エスタード紙によれば、従来は世界一安いサトウキビ価格に支えられていたブラジルの砂糖・エタノール業界が窮状に直面している原因は、サトウキビの生産コスト上昇や品質低下など。その背景には、2008年の国際的な金融危機があるという。
広大な国土に広がるサトウキビ畑は2004年訪伯の小泉純一元首相を感嘆させたが、現在のサトウキビ価格はオーストラリアや南アフリカ、タイ産より高価。コロンビアやガテマラの後塵を拝すとの声さえある。
サトウキビの生産コスト上昇にはレアル高や重税も関係しているが、2014年までとされる収穫の機械化に対応しきれない農家と収穫のための人手不足、08年の危機前は好調だった砂糖・エタノール産業に新規参入した企業の無計画な競合なども無縁ではない。
機械化に関しては、機械導入資金の不足や機械化に適した空間をとらずに栽培するなどの不手際も影響。人海戦術で切り抜けてきた業界は収穫のための熟練労働者や機械の操縦者不足にも悩まされている。
同時に、一つの地域に複数の企業進出で精製工場建設用地や栽培用の土地が急騰、新たに開拓した畑に栽培した種が気候や土地に適さず、肥料代がかさむ割に収量が伸びないなどの誤算も連続。
08年の国際的な金融危機で投資が削られ、新たな栽培地開拓が遅れた事や、土地の改良をしないまま植え付けたりした事も収量減少や糖度低下の原因となっている。
打開策の一つは、乾燥に強い種や虫害を受けにくい種、糖度の高い種の開発などだが、遺伝子組換え種の開発・承認は5〜8年を要す。砂糖価格が急落すればブラジル産エタノールの競争力改善の一助となるというものの、09年は100万リットルだった米国からの輸入が10年には7千万リットルに急増した原因は需要の高まりと生産の伸び悩み。根本的な解決には時間がかかりそうだ。