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8月から景気減速傾向か=成長率と正規雇用が下降=「まだまだ市場を牽引」

ニッケイ新聞 2011年9月16日付け

 ブラジル中央銀行(中銀)が発表した8月の国内総生産成長指数と労働省が発表した正規雇用件数が下降しており、ブラジル経済の景気減速を指し示す数値が出始めていると15日付けエスタード紙などが報じている。8月末の基本金利(Selic)の引下げ時点で、一部市場には織り込まれ済みだった内容だが、改めて今後の成長への不安感を抱かせる方向性を示している。
 14日に労働省が発表した広報によれば、8月に生まれた新規正式雇用は19万件で、ここ3カ月間下降ぎみだった7月に比べれば約5万件多い。これは短期的に見れば、年末商戦にむけての生産体制に入ったことを反映したものだと分析されている。だが、昨年8月には約30万件もあったので、この3年間でみると最悪の数字となった。
 カルロス・ルッピ労相は記者会見で、今年1年間の新規創出雇用件数に関して「300万件を少し下回るくらいと見ている」と発言している。
 ここ数カ月間は地方部の農業労働者の需要がかなり高かったが、収穫期が終り、予想創出の中心が年末にかけて大都市圏の工業、サービス業に移ってきている。例えば8月の大都市圏の新規雇用は約8万件だったが、地方部の農業雇用は5万3千に落ち着いている。
 サービス業の新規雇用は9万5千件、商業は4万4千件、工業は3万6千件、それに加え、注目を集めているのは建築関連雇用の3万1600件もあることだ。
 ルッピ労相は次の数カ月の見通しに関して、「なんといっても商業関連だ」とし、その他では食品関係の工業雇用、続いて機械、化学、服飾と見ている。
 一方、ブラジル中央銀行(以下、中銀)が14日に公表したところでは、4—5月期に比べて6—7月の経済成長はわずか0・01%増と事実上横ばいで、この成長率を年間にしても約2%にしかならない。ただし、7月だけに区切れば、0・46%であり、悪くない数字となる。
 論争を呼んだ8月末の基本金利の12・5%から12%への切り下げが発表された時点で、一部の経済学者にはこの成長鈍化は予測されていた。その時は「国際情勢の悪化への対応を強める」との外部要因が強調されたが、国内の動向も当然考慮されていたといえる。
 金融専門家のジョゼ・ジュリオ・セナ氏はエスタード紙の解説の中で、「6月までの8カ月間を平均すれば、年率4%成長を維持してきたが、6—7月は年率2・9—1・7%成長に減速している。2010年10月から今年2月までの正規雇用創出が平均18万件だったの比べ、6—7月が約10万件程度になっているのは、最初に財やサービス部門で見られた景気減速が、雇用部門にも波及してきた結果。ゆれが大きいとしても、まだまだ市場を牽引すると見られる」と論じている。