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最高裁「盗聴捜査は無効」=安堵する疑惑のサルネイ家=振り出しに戻る連邦警察

ニッケイ新聞 2011年9月20日付け

 最高裁(STJ)は15日、ジョゼ・サルネイ上院議長(PMDB=民主運動党)の息子フェルナンド氏に対する連邦警察の捜査は違法性があるとして、その内容を無効とする判決を裁判官が全員一致で下したと16、17日付けブラジルメディアはいっせいに報じた。
 連邦警察によるサルネイ家の犯罪捜査は「ボイ・バリーガ」(牛の腹)と呼ばれる。その捜査内容を報じた09年のエスタード紙の報道が、フェルナンド氏から提訴され、司法から同紙が「検閲」を義務付けられるなどの異例ともいえる事態に発展していた。
 18日付けエスタード紙によれば、フェルナンド氏ら家族は、父親が上院議長として特権的に知りえる国家的な機密情報を自らの企業活動に利用していた疑惑がもたれており、連邦警察は銀行口座の運用内容開示に関して司法許可をえて進めていた。その過程で、司法許可に先行する形で盗聴捜査が行われており、そこで「特権的な影響力の行使」が副次的に分かり、それが今回の疑惑に繋がっていた。
 判決により、この時の盗聴調査は違法だと判断され、それ以前に行われた口座の運用捜査の内容も含め、捜査の過程で明らかになった内容は「すべて無効」となり、連警は事実上振り出しに戻る形になった。
 これを受け、連邦検察省は最高裁もしくは連邦高等裁判所に上告することを検討している。
 17日付けグローボ紙によれば、この捜査は07年にフェルナンド氏とその妻の口座に通常ではない2百万レアルもの運用が見つかったことが発端。サルネイ家の拠点があるマラニョン州は「ボイ・ブンバ」祭などで有名なことから、連警は「ボイ・ハリーガ」捜査と名づけた。盗聴捜査の中で、サルネイ上院議長自らと、その娘でマラニョン州のロゼアナ州知事がルーラ政権の閣僚人事などを交渉していることも明らかになった。
 捜査の過程で、家族内にいる特権者の存在を衣に着たフェルナンド氏による「影響力の行使」があったとみられ、外国に違法に送金していた疑いも持たれている。フェルナンド氏は常にすべての容疑を否認している。
 最高裁判断では「盗聴は基本的に違法。他の捜査手法を全てやりつくした後の最後の手段としてのみ認められる」とされており、係争中の他の案件に関してもこの考え方が適応されることになり、今後の連警捜査にも少なからぬ影響が出ると見られている。
 労働者党(PT)政権の中軸を裏から表から支え、良くも悪くもPMDBの伝統的な体質を最も体現するとブラジルマスコミに頻繁に表現される元老たる政治家サルネイ上院議長。その息子に関する疑惑であり、司法の判断には大きな注目が集まっていた。19日付けエスタード紙は、読者からの「火のない所に煙は立たない。連警は裁判官の方を捜査すべきだ」などの声も紹介している。