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援協Dr南の=病は気から!?=第1回

ニッケイ新聞 2011年9月24日付け

 「精神的なショックが慢性的に続くと、病気を誘発します。病気の本当の原因がどこにあるのかに、もっと目を向けるべき——」。内科医として50年のキャリアを持つ、サンパウロ日伯援護協会総合診療所の南利実医師(81、二世)は、日常臨床で「心と病気は関係している」と常々感じてきたという。「例えば胃潰瘍なら、医師はその治療だけに専念し、発症の原因は見ようとしない」と指摘する。昨今確立された「精神神経免疫学」という学問では、ストレスや心理状態が身体に与える刺激が、精神から神経系や免疫系に影響し、それが複雑に関与して健康維持や発病、病気の回復に関係しているという事実が研究されているという。実際の患者の例もいくつか盛り込まれた、南医師による寄稿「心と身体」を掲載する。(編集部)

【第一部】精神身体・心身(Psicossomatica)

(1) 序論

 今回は、私達の心が体に影響し、病状、病気を引き起こす精神病学に関する問題を取り上げてみました。
 一般内科医としての立場で、このような問題に挑戦することは大変奇異で厚かましいように思われるかもしれませんが、私は長年医者として、多くの患者の病気は、心の状態に原因があるのではと感じてきました。
 子供の頃、「病気は気・心から来る」といつも両親から聞かされました。それで、ご先祖様の経験からの知恵が、私たちの健康、幸福にどれほど影響しているか綴ってみました。
 私は内科医であり精神病については素人なので、一般的な言葉で訴えるような気持ちで、そして少しでも誰かに役立つことも願って筆を執りました。
 私たちの体と心の関係に関する知識・調査・研究は古く、互いに密接な関係があり、心の状態が病気に影響することについて今日疑う人はほとんどいません。
 事実、この2種類の病気、身体病と精神病は一緒に生まれたと考えられています。にもかかわらず、現代の医学の傾向は精神病を無視し、あるいは軽視し、身体の病ばかりを見つけようとしています。
 誰もが知っているように、現在は不安、心配、憂鬱、恐怖、憎しみ等が吸い込む空気のごとく豊富にあり、この影響により精神身体病、心身症が引き起こされます。
 つまり、身体病の原因が精神・感情に関連しているのではないか、ということです。私達の身体と心、あるいは精神、魂が本質的に結ばれているという考え方が根をおろし始めました。ということは、身体が傷つけば心にも相互作用(傷)が起きるということです。
 それでは一般内科医はどのような行動をとるべきでしょうか?
 理想的な手段は、心理学者もしくは精神科を紹介することでしょう。しかし、精神科医の数は、患者の数と比較すると大変少ないのです。精神科医の診療所の前に長い列ができることは目に見えています。
 そして、社会、経済的に困っている人と困っていない人が別れ、診察の列が並びます。また人間関係における先入観(Preconceito)があり、精神科の受診が必要と聞くだけで気違いのごとく取り扱われたような思いをし、気を悪くする人が少なくありません。
 多くの人は、精神病患者・心の病気の人は病気を創作したり、病気のふりをしたりする人だと思い込んでいるので、気を悪くするのです。
 精神身体病、あるいは心身症(Doencas Psicossomatica)は想像ではなく事実、臓器に傷が現れるのです。感情もしくは心、精神状態の影響で傷が発生し、悪化したり良くなったりしても不思議ではないのです。
 では、皆さんがよく勘違いしやすい三つの精神異常について紹介いたします。念を押しますが、心身症とは違います。
 ひとつは、ヒポコンドリ症(Hipocondriaco、心気障害)、それから詐病(Simulacao、意図的でない仮病)、第3番目が転換神経症(Neurose de Coversao)です。
 ヒポコンドリ症は自分の健康の状態に気を配りすぎ、ありもしない病気を想像し、自分の病気を表現してくれる医師を求め次々と診療所を彷徨する、という精神的な問題を示します。
 詐病は、検査では無病であっても無意識に病気だと訴え、痛みを実際に感じている精神病です。
 転換神経症(Neurose de Conversao)は、実際に泣き、涙を流す精神症で痛みを実感しますが、精密な内科的診察及び臨床検査の結果では、特徴のある判断できる病気を提示しない神経症を指します。
 このような患者ほど医者に手を焼かせるのです。それは訴える症状が皆、心の異常だとしても、決して早期の癌か他の病気が潜んでいないとは限らないからです。(つづく)