ニッケイ新聞 2011年9月30日付け
ブラジルとの共同国家プロジェクトである、ボリビアを通るアンデス横断道路建設への反対運動がインディオ系住民らを中心に激化して大臣2人が辞めるなど、エボ・モラレス大統領の政権基盤を揺るがす大騒動に発展しているとBBCや伯字紙各紙が大々的に報じている。ノドから手が出そうなほど太平洋側に抜けるルートが欲しいブラジルにとっては死活問題だが、ボリビア国内の部分で問題が起きているだけに、早期解決は難しい状況になってきている。
与党の社会主義運動党のルシオ・ワイチョ下議は、「この問題にはブラジルから干渉されたくない。あくまでボリビア国内の問題であり、モラレス大統領と国民の間で解決すべき」とBBCの取材に答えている。
というのも、総工費4億1500万ドルの財源が社会経済開発銀行(BNDES)からボリビアとブラジル建設企業OASに融資されているものだからだ。工事工程は3段階に分かれており、うち第2工程で問題が起きた。
抗議行動の中でも特に日曜(25日)、女性や子供も混じっていたインディオの行進に対し、警察が催涙ガスを使って武力で鎮圧した事で紛争が一気に拡大した。
政治学者のグスタボ・ペドラザ氏は、「両国にとって横断道路の存在が重要である事は論を待たない。街道建設自体には誰も反対していない。ただ、通るルートがよくない。あそこには実際にインディオ家族が生活していて、居住権を剥奪して強制撤去するのは人権侵害のおそれがある」と分析している。
ワイチョ下議は、現在のルートはインディオ居住区であるイジドロ・セクレ国立公園を横切る形になっているが、これを変更するしかないのではとしている。インディオらは街道が通る事で、部族居住区に麻薬が横行するようになる可能性を危惧し、感情的な抵抗感を示しているようだ。
計画反対派からすると、このルートが完成すると周辺のコカ栽培者の生産物輸送を容易にし、違法活動を活性化させる恐れがあるとしている。
27日にはサシャ・リオレンチ内務大臣が警察力の過剰行使に抗議して辞任し、26日にはセシリア・チャコン防衛大臣も翌日に行使が予定されている武力鎮圧を批判して辞職していた。さらに内務副大臣も辞めるという事態に陥っている。
これに抗議して、28日には首都ラパスでもゼネストに発展しており、支持率は40%以下にまで下がったと28日付エスタード通信は報じている。また、一部のインディオからは「我々の代表だと思っていたのに、今回ほどひどい事は軍事政権時代にもなかった」と痛烈な批判を浴びせているとの報道もある。
AFP通信26日付けによれば、モラレス大統領は「申し訳ない。私はなんの武力鎮圧に関する大統領命令も発していない。もう一度、対話を呼びかけたい」と謝罪している。