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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2011年10月4日付け

 NYでエイズが発見されたころ「現代のペスト」と恐れられ、世界中の人々が恐怖に取り付かれ怯えた。あれから30年近くになるが、先進国での蔓延が危惧されたけれども、アフリカなどの発展途上国への広がりが深刻になり、国際的な取り組みが実施されているが、完璧な退治には遠い。しかも、治療法は進歩しているが、今も—「完治はしない」▼後進国のエイズ禍は最悪の極に達し、アフリカでは、実際に家族全員が感染や患者になる悲劇も起こっている。こうした哀しみの現実を先進国も笑って見過ごすわけにはいかない。日本でも厚労省のエイズ動向調査によると、新規のエイズウイルス(HIV)感染者と患者の合計が5年連続して過去記録を更新している。昨年の集計によると、新規感染者1048人、患者が400人。このうち90%が男▼どうも、医学技術が進み「エイズは治る」の誤った情報を真実と受けとり信じているような気もする。確かに延命などには効果のある薬品も開発されてはいるが、先述の通り「完治はない」のが正しい。それに—昔は外国で感染が100%だったのに今は国内感染が90%になっている。もっと懸念されるのは、新規感染者が、男性同性間の性的な接触による者が、異性との性的結びつきよりもはるかに多い事実である▼また、感染してから発症するまでに長時間かかるために、配偶者などへの二次感染もありうるのも、エイズ問題を複雑にしている。かといって全国の国民に抗体検査をし、エイズ強制を調べるのも至難だし、難しい課題が山積しているのも困ったことだ。(遯)