ニッケイ新聞 2011年10月5日付け
2日から欧州訪問中のジウマ大統領は4日、第5回ブラジル・欧州連合(EU)首脳会議で、2008年に続く国際的な経済危機乗り切りには積極的な成長策をとる必要がある事などを強調し、ブラジルも危機脱却に協力する姿勢を示した。
外務省公式サイトなどによると、会議終了後に行われたEU首脳への挨拶で、ジウマ大統領は、〃アラブの春〃、持続可能な開発、国際的な経済危機などの課題を前に、ブラジルとEUの協力関係は益々重要なものとなった事を再確認した。
3日に行われたベルギーのイブ・ルテルム首相との会談で、1980〜90年のラ米での経済危機の時、ラ米各国が縮小型の経済政策を採った事が危機からの脱却を遅らせた事を例に上げ、積極的な成長政策こそが解決の鍵であると進言した事は4日付エスタード紙なども報じた内容だ。
ジウマ大統領は、ルテルム首相との会談後、ヘルマン・ファン・ロンパウ欧州理事会議長(通称EU大統領)やジョゼ・マヌエル・ドゥラン・バローゾ欧州委員会委員長との夕食会に出席。4日の首脳会議には、両氏を含むEU代表6人と、ジウマ大統領、ブラジル閣僚7人が参加した。
ギリシャがデフォルト(債務不履行)寸前で、銀行の倒産なども危惧されている状況下、最大の関心事でもある経済問題については、経済成長こそが負債の返済や公的資金の流れの適正化を可能にすると強調。
ブラジルを含む新興国は20年以上経済成長を遂げられなかったが、積極的な成長政策により、雇用の創出や所得の拡大、生産性の向上といった成果を上げており、現在の経済危機も、各国が積極的なリーダーシップをとる事で克服できるとの考えを明らかにした。
また、今後は南米全体の財務相会議が行われ、カンヌでのG20首脳会議に備える予定である事にも言及。新興国ならびに南米の雄としてのブラジルの立場を強く打ち出したといえそうだ。
同会議では、持続可能な開発などに関係する科学技術や環境面での協力関係を強化する事も話し合われ、ブラジル科学技術省とEUリサーチセンター間の協定が結ばれた他、南米〜欧州間の人の動きを活性化するための5万人観光計画などの合意も成立した。
2008年の経済危機による景気後退後、回復が遅れ、ギリシャやポルトガル、イタリアなどの財政問題も表面化していたEUにとり、ブラジルを始めとするBRICS諸国からの支援は不可欠。
ベルギーでは北アフリカや中東でのアラブ諸国の政変、国連安全保障理事会改革問題なども話し合った大統領は、4日夜ブルガリアへ。5日は政治経済について同国首脳と会談を行い、6日に父の生誕地訪問の後、7日にはトルコへ。ブラジルには8日に帰着の予定だ。