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コラム オーリャ!

ニッケイ新聞 2011年10月15日付け

 当地で活躍する日本人芸術家から、「画材の豊富さは日本に敵わない」と聞いた。現代でそうなのだから、昔の苦労は推して知るべしである。
 「主人は年に一つしか作品を作らなかった」と話すのは漆彫刻家・今雪皓三氏の妻、月子さん。
 59年に来伯。食器製造業に携わりながらも製作活動を続けたが、発表の場は創立に関わった文協工芸展のみ。それほど漆が貴重だった。
 『火の鳥』(64年)が、文協ビルで開催中の大総合美術展で鑑賞できる。来伯5年後の初作。「持参したものを大切に使っていたから。90年代まで持ちました」と月子さんは振り返る。
 「陶芸家は増加したが、材料の入手が難しい彫金や漆器は減った」とある工芸委員。細々と守ってきた技能が材料不足で絶えるとしたら悲しい。彫られた赤い不死鳥に皮肉を感じた。(亀)