ニッケイ新聞 2011年10月25日付け
アルゼンチンの大統領選挙が23日に行われ、現職のクリスチーナ・キルチネル大統領が再選されたと24日付伯字紙が報じた。現政権第2期、昨年10月に亡くなった夫のネストル前大統領から数えれば第3期目となるキルチネル政権は12月にスタートする。
ア国初の公選女性大統領クリスチーナ・フェルナンデス・デ・キルチネル氏が再選を決め、23日夜勝利宣言を行った。
同氏再選は8月14日の予備選で50・4%の支持を得た時から予想され、一時低迷した支持率が回復に転じてからは地滑り的な勝利。24日午前、開票98・2%の時点での得票率53・9%は民政復帰の1983年以降最高の記録だ。
現職大統領再選を伝える報道中、繰り返し出てくるのは〃キルチネリズム〃という言葉。2003年に正義党所属のネストル・キルチネル氏が大統領当選を果たして以来のキルチネル政権は、12月から第3期入り。目ぼしい後任者がおらず、キルチネリズム継続のため、再再選に向けた憲法改正を行うとの見方も出ているのが現状だ。
キルチネル政権継続の推進力は、2001年にデフォルトに陥り、2002年の経済成長がマイナス10・9%、失業率も2割に達した同国経済が、ネストル氏当選後の03年以降、8年連続で平均7・6%、2010年は南米最高の9・2%成長という奇跡の復活を遂げた事や、貧困者への生活扶助などの社会政策が浸透した事などだ。
今年の経済成長も、中国やインドに輸出している大豆や小麦の価格高騰や、最大の貿易相手国であるブラジルの景気好調を背景に8%超と予想され、失業率も7・4%に改善した事はクリスチーナ氏再選を後押しした。
ところが、再選決定後に懸念されるのは、ブラジル経済減速化の兆しとこのところ続く両国間の確執などだ。
例えば、ブラジル向け輸出が8割の自動車産業は、ブラジルでは販売数が減り始め、在庫も2009年以降最高に達して希望退職を募る企業も出始めているのが実態。また、ア国がブラジル産の靴に輸入障壁を設け、国境に通関待ちの製品山積みなど、両国が自動通関を取り消した製品増加といった報道は両国交易減退の可能性を孕んでいる上、同国のインフレは政府の公式発表9%に対し、実際は25%前後など、国民の負担が増えている。
報道統制も現政権で取り沙汰される事柄の一つで、現政権は非政府系の新聞〃クラリン〃を最後まで追い込む構えとの見方も一般的。ネストル政権以降、閣僚会議もなくなり、大統領決定を聞いた閣僚が慌てる場面も頻発しているという。
女性としてはラ米初の再選を果たし、勝利宣言ではジウマ大統領からも祝福を受けたと感動の面持ちで語ったクリスチーナ氏が、その強固さをどこまで維持できるかも注目されている。