ニッケイ新聞 2011年11月1日付け
10月27日に66歳の誕生日を迎えたばかりのルーラ前大統領が喉頭ガンに冒されていることが判明し、31日から化学療法を開始したと10月31日付伯字紙やサイトが報じた。
10月27日の誕生日の席で、ルーラ前大統領の声枯れや喉の痛みが40日も続いていると聞いた主治医で心臓科のロベルト・カリウ・フィーリョ医師によれば、来年まで様子を見ようとしていた前大統領に早めの検査を促したのはマリーザ夫人だったという。
病院嫌いな前大統領がサンパウロ市のシリオ・リバネス病院を訪れたのは翌28日。2種類の検査を受けた結果、声門上方に約3センチの腫瘍があるのが発見され、31日から治療開始となった。
治療は化学療法と放射線療法併用の見込みで、化学療法は、3種類の薬を入れた容器を腰に固定し、右胸にあけた穴に通したカテーテルで患部の血管に直接注入するという形で実施。カテーテル挿入後は自宅に戻り、計5日投薬のパターンを3週毎に繰返す。放射線療法は1月開始の予定だ。
前大統領のガン発病を知ったジウマ大統領は、同じ病院で治療を受け、リンパ腫完治という自身の経験から、「前大統領も完治すると確信」しており、現大統領かつ前政権閣僚の一人であると共に「友、同伴者、姉妹、信奉者として闘病に寄り添いたい」との意向を表明した。
退任後も国内外で講演活動を行うなど積極的に行動していたルーラ前大統領は、声枯れや喉の痛みは頻繁な旅行や講演によるものと見ていたが、ガンと診断された事で、向こう3カ月間の旅行や講演をキャンセル。
中止となった旅行日程には、米国の非政府団体〃アフリカレ〃での表彰式出席やドミニカでの講演、ベネズエラのウゴ・チャベス大統領との会談などが含まれており、同じくガンで闘病中のチャベス大統領やパラグアイのフェルナンド・ルゴ大統領からは病状見舞いの文書が届いている。
また、前大統領発病の知らせに少なからぬ不安を募らせたのは、12年の市長、市議選出馬を考えている労働者党候補者達。人選もさることながら、支持率の高さや雄弁さで知られる前大統領に応援演説や選挙対策上の助言をと考えていた面々がルーラ氏の復帰時期を気にしている事は10月30日付伯字紙でも触れている。
化学療法と放射線療法終了までは4カ月はかかる見込みで、治癒率は80%以上、早ければ来年4月頃に活動再開との声もあるが、治療効果は個人個人異なり、今後の診断を待つ必要がある。
10月31日の上院は前大統領への声援で始まり、主だった政治家が与野党に関わらず見舞いのメッセージを送ったなどの報道は、前大統領が退任後も影響力を持っている事の証と言えそうだ。