ニッケイ新聞 2011年11月4日付け
国連開発計画に基づく人間開発指数(HDI)が2日に発表され、0・718のブラジルは187カ国中の84位だったと3日付伯字紙が報じた。国内では所得向上、社会格差縮小とされているが、国民一人当たりの所得では91位、社会格差の大きさは世界10傑入りなどのデータもあり、更なる改善が望まれている。
HDIで見たブラジルは2007年に高開発国の仲間入りをし、順位も少しずつ向上しているが、近年の指数は伸び悩み、今年の順位は昨年比1ランクアップに止まった。
国連が使うHDIは、平均余命や教育、購買力平価で計算した国民一人当たりの国内総生産(GDP)の3指数を基に算出し、1に近いほど開発度が高いとみなされる。
今年の1位は0・943のノルウェーで、3年連続、9度目の世界一となった。超高度開発国47カ国の指数は0・793以上。ブラジルが位置する高度開発国47カ国の指数は0・783〜0・698。中度開発国は0・522以上で、低開発国の最低は0・286。
同指数は1990年に開発されたもので、同年のブラジルの指数は0・600。1980年の算定指数は0・549だから、ここ30年で年平均0・87%改善されてきた事になるが、直近10年の改善率は0・69%。
開発が進むほど指数改善が難しくなるのは当然だが、ブラジルの指数を押し上げてきたのは平均余命で、1980年の62・5歳が今年は73・5歳と報告されている。
その一方、伸び悩んでいるのは所得と教育。平均就学年数は1980年の2・6年が7・2年に改善されたものの、この数字は135位のガーナと同等。期待値は高校までの義務教育プラスアルファの13・8年だが、実態は、初等教育さえ終えていない人が多い事を示している。
また、国民一人当たりの年間所得1万162ドルは91位。最低だった1985年の6732ドルから見れば50%以上向上したが、ノルウェーと比べれば5分の1強で、92位のトルコより少ないという。
一方、HDIに社会格差の大きさを加えた不平等調整済み人間開発指数(IHDI)で見ると、指数0・519のブラジルはガボンやモンゴル以下の97位。ブラジル内には、低所得で教育や保健制度も十分に利用できず、劣悪な住環境、上水道不備、社会保障制度の恩恵もなしという全条件を満たす超極貧が40万人、いずれかの条件を欠く貧困者は510万人に上る。
1990年は所得上位20%の人と下位20%の人の給与は34倍の差だったが、現在は18倍というから格差縮小は確かだが、それでもブラジルは世界10位の格差社会。これからは、所得の偏りや教育の機会不均衡、上下水道普及率や医療施設利用の便などの格差を縮小し、生活の質を改善する事が大きな課題だ。