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第52回海外日系人大会=「がんばれ! 日本」=復興祈願を大会宣言に

ニッケイ新聞 2011年11月4日付け

 「第52回海外日系人大会」が10月26日、東京・憲政記念館で開催された。海外日系人協会(田中克之理事長)主催によるもので、約300人上の日系人代表が全世界から集まった。「強めよう日本との絆—国難に立ち向かう日本と海外日系人社会」をスローガンに26日から3日間、一連の行事が行われ、各国の東日本大震災募金キャンペーン、在日日系人の被災地救援活動や義捐金活動の報告がなされた。その中で決議された大会宣言の全文を以下紹介する。(編集部)

1.未曾有の東日本大震災からの再起を、私たちは力を尽くして支援し続けます 〃がんばれ!日本〃

 かつて経験したことのない深刻な大災害をもたらした東日本大震災に、海外に住む日本人・日系人は大きな衝撃を受けました。友人知人の安否を気遣うばかりでなく、日本の浮沈にかかわる大事件と受け止め、世界各地の日系社会でほぼ同時に『日本支援』の義捐金募金活動が始まりました。
 すでにその多くが、地元日本総領事館、日本赤十字、海外日系人協会を通じて、被災地に届いています。これと呼応して在日日系人は被災地へ急行し、救援のボランティア活動に参加しました。しかし遠く海外に住む日系人は、心を痛めながらも被災地に赴くことがかなわず、祖国日本の再起を祈るばかりでした。
 私たちはこれからも続いて再起支援に力を尽くします。〃がんばれ!日本〃日系社会は日本の活力に期待しています。

2.日本文化の浸透と継承日本語教育の推進に努めます

 日本文化の浸透と日系社会の活性化、次世代の日系社会を担う人材育成のためには、継承日本語教育の実践、日系日本語学校の発展が欠かせません。継承日本語教育はただ日本語を学ぶだけではなく、親から子へ、子から孫へと日本語が受け継がれることによって、日本文化を学び、自らのルーツを学ぶ「移住学習」をもう一つの柱としています。
 「移住の歴史」「日系人の国づくりへの貢献」「二つの文化の絆」とい三つの視点で、移住と日系社会について学ぶのが「移住学習」であり、日系人としてのアイデンティティが醸成されることをねらっています。またこれによって日本と居住国の二つの文化を知り、両国の架け橋となる視野の広い人材の育成につながると考えます。
 継承日本語教育には、これを支える優秀な教師の育成、養成が必要であり、国際協力機構の継承日本語教育教師研修は最も重要な事業です。日本語を学習した若き日系人が日本でさらに学ぶ県費留学制度を復活・拡充させ、日本への留学を盛んにする必要があります。

3.日系高齢者の一層の福祉向上を図ります

 高齢の移住者に、食、住の「日本回帰」の現象が現れるといわれています。とくに介護を必要とする高齢の一世には、時に日本人が住みやすい家、日本食など日本人に適合する「衣食住環境」が必要とされ、日系老人ホーム、介護老人ホームなどが各地の日系社会にできています。
 また国によっては日系生活困窮者の保護や老人・身体障害者問題など諸々の対策に現実に取り組んでいます。私たち自身、これらの問題解決に努めることはいうまでもありませんが、日本政府、民間諸団体をはじめ多くの方々の変わらぬご支援をお願いします。

4.苦闘している在日日系人に理解と協力を

 近年40万人を超えていた在日日系人は、現在30万人に減りました。2008年の米国発世界同時不況と、つい先日の東日本大震災にショックを受けて、本国へ続々帰国したからです。でも日本に留まった日系人も働き口には苦労し、雇用が確保できている状況ではありません。
 しかし、在日日系人の多くは日本を第二の祖国と考え、安定した生活を目指して苦闘しながら、日本への感謝の気持ちを持ち続けているのも事実です。東日本大震災でいち早くボランティア活動に駆けつけたのは、その現れともいえます。とくに日本の財政事情が厳しい中で、政府が在日外国人への支援事業に力を注ぎ、日系人もその恩恵を受けています。
 それでも日系人を取り巻く環境には問題が多く、特に雇用、教育、高齢化対策など日系人自らその解決のための行動が必要と自覚していますが、これからも広く日本の皆さんのご理解ご協力をお願いします。

5.二つの国籍を持つ「重国籍」を日本も認めてください

 日本では未成年が「一人で2国以上の国籍を持つこと」(重国籍)を認めていますが、成人するとその一つを選択しなければなりません。
 いま海外に住む移住者には、戦後の農業移住、ビジネスでの定住、国際結婚などさまざまな形があり、日本国籍から離脱した理由も多岐にわたっています。これら海外在住者や日系人の多くが、重国籍を持つことを希求しています。
 世界各地に暮らす人々からも、日本に住む高齢の両親の世話をするため、あるいは子供の教育のため、その国の国籍を保持しながら日本の国籍を取得したい、という希望が出ています。
 一方では、外国で生まれ日本の国籍を留保したまま、その国の国籍を取得して重国籍となっている二世も多く存在しています。
 海外在住の日本人や日系人は、日本にとっての在外「資産」といわれますが、成人して移住国の国籍一つを選択した結果、日本国籍を認められないというのは、大事な在外資産を日本が自ら放棄することになります。これが日本政府に対して重国籍を容認するよう重ねて求めている理由です。

6.「日系ユース」は、留学の経験を幅広い視野で活用します

 今大会の「日系ユース」分科会には多くの若者が集まり、そのほとんどが留学か研修で日本に滞在しています。幼い頃から日本で教育を受けている学生もいます。
 東日本大震災後は、他の国の若者や日本人と協力しあって被災地でボランティア活動を行い、微力ながら復旧のお手伝いをさせてもらいました。そのことで、日系人として日本への想いとその絆を改めて意識することができました。また、私たちの出身国の日系社会だけではなく、社会全体が日本の復興を心から応援していることも感じることができました。
 私たちは日本で得た専門知識や経験をグローバルな視点に立って活用したいと思いますが、日本での就職も含めて様々な可能性を検討したことは、とても有意義な意見交換になりました。私たちは世界で評価される人材になることを目指し、そしてこれからも日本との繋がりを大切にしていきたいと思っています。

7.在外選挙に簡便な方法の導入を要望します

 在外選挙が実施されて11年の経過を振り返ると、登録者数、投票者数がともに伸び悩んでいるのは、登録手続き、投票方式が煩雑で難しいという、選挙の制度的な問題が大きな要因の一つと考えます。これらをもっと簡便にして、
(1)海外移住の際に市(区)役所で選挙人の自動登録をする
(2)投票通知を選挙人登録者に自動配布(郵送)する
(3)在外公館でのFAX投票や、より簡便な電子投票を導入する
などの改善を提案します。
 選挙制度を設けたという形式ではなく、実質的に在外日本人をも選挙に参加させるよう、日本政府の善処・決断を要望します。また在外選挙区の創設も併せて検討されるよう希望します。

8.国際日系ネットワークをさらに広く展開します

 海外への情報伝達や情報交換は、インターネットを抜きにして考えられません。今大会に参加している各団体の活動も、日本や近隣諸国との連帯事業が多くなってきています。海外日系人協会が運営する国際日系ネットは、各団体の活動を会員以外の人々や日本への広報にも活用できます。この国際日系ネットワークをさらに広く展開して、世界の人に活気ある日系人の活動を紹介していくことが、私たちに求められていると考えます。

要望

1.日伯両国間における査証免除協定の締結を要望します
 査証免除協定については両国間で協議が始まっていますが、私たち定住者・日系人にも影響の大きい短期滞在も含め協議されることを希望します。
2.多言語による海外日系人大会を運営する工夫を要望します
 日系社会の多くが3世、4世になる時代を念頭において海外日系人大会を多言語で実施することを要望します。