ニッケイ新聞 2011年11月11日付け
ギリシャがまた廃墟になった——最近のEU金融危機を見ていると、まるで欧州史を早回しで見ている気がする。地中海文明のルーツといわれる古代ギリシャ文明が衰退した後、ローマ帝国は紀元前200年前後、地中海の対岸にあったカルタゴ(リビアを含むアフリカ対岸部)とポエニ戦争をし、疲弊する中で衰退した。その後、大航海時代を謳歌したスペイン帝国・ポルトガル帝国が衰退の道を歩む▼多大な債務を抱えたギリシャが国家破綻するとの見通しから救済策が練られた。それが決まる過程でローマを首都とするイタリアが、リビアの市街戦に乗じて多国籍軍の一員として爆撃に加わった。カダフィ大佐殺害までは計算通りだろうが、今度は自身の国家運営の危うさが国際問題とされて、ベルルスコーニ首相が辞任に向かった▼EU圏でその次に経済が脆弱なのはスペインやポルトガルとの声が高い。ちなみに大航海時代の後、17世紀には清が英国の策略でアヘン戦争に敗れて植民地化された。まさか今回の欧州経済危機が中国に飛び火・・・という筋書きにはならないだろうか▼かくいうブラジルも他人事でなく、昨今の経済情勢は危うい感じが強まっている。国民の一人一人がかつて抱えたことのない過剰債務に苦しみ始めていることは、本紙2面や経済面に詳しい。先進国が経済不況のために、当地は内需拡大に頼らざるをえない中、国民が本来の収入以上に消費してしまった結果が各種調査に現れている▼既に進出して地盤を築いている企業は別だが、今からブラジル進出しても苦労が多いだろう。「リオ五輪までは大丈夫」という言葉には何の確証もない。(深)