ニッケイ新聞 2011年11月22日付け
【既報関連】リオ州沖カンポス堆積盆地フラーデ油田での原油流出はほぼ止ったが、流出総量はシェブロン社試算を大幅に超える2700〜3千バレルと見られ、国家石油・天然ガス・バイオ燃料監督庁(ANP)は21日中にも罰金を科す意向と21日付ブラジルメディアが報じている。
ANPによると、最も流出が盛んだった11日撮影の写真には、海底の亀裂に沿って細い帯状に続く原油の黒点がくっきりと現れており、その時点の原油流出量は200〜400バレル/日に上っていたという。
ANPは1日平均330バレルの原油が流れ出していたと見ており、流出総量は、シェブロン社が19日に発表した65バレル未満をはるかに上回る2700〜3千バレルのはずと推定。
シェブロン社は、油田の掘削量減少を補うための泥水の注入量を誤ったため、圧力がかかり過ぎ掘削後に封鎖したはずの穴から原油が漏れたとして、自社のミスを認めているが、海底の亀裂は幅が広く、一時は28カ所から原油が流れ出していた。シェブロン側は原油漏れ対策は既に完了し、現在まだ若干漏れている1カ所と時折油滴が見られる8カ所も、亀裂封鎖後の残留物が表面に浮かび上がってきているものと説明している。
これに対しANPは、原油が一滴でも漏れている間は対策完了ではないとした上、21日にも、掘削作業上必要な設備を備えておらず、監督庁に対する報告が遅れたことなどを理由に最低3件の罰金を科す意向だ。
フラーデ油田での原油流出に関しては、18日以降連日の報道が続き、シェブロン社が、ANPから認められていた深さを上回る所まで掘り下げた事が海底の亀裂の原因で、連邦警察も、岩塩層下の原油まで掘削しようとしていた疑いがあるとして捜査を開始した。
同社が岩塩層下の原油まで掘削しようとした可能性については、掘削権を与えられた地域内の作業で違法ではないとの見方もあるが、掘削作業の詳細を前もってANPに報告する義務は果たしていないなど、規定違反は明らかだ。
原油流出はペトロブラスが7日に行った洋上視察で認められており、同社への警告もなされていたというが、ANPへの報告や事故処理は遅れ、大西洋上には広大な油の帯が広がった。
同社へは、国立再生可能天然資源・環境院(Ibama)とリオ州からの罰金なども科される予定で、18日の洋上視察に同行したカルロス・ミンク州環境局長は、海面にはまだ気泡が上っており、繁殖期で同水域を移動し始めた鯨は油の帯から300メートルの所を泳いでいたと報告。原油回収や環境改善のための経費は同社負担だが、鯨やいるか、海洋微生物などの生態系への影響は計り知れず、罰金や改善費用は1億レアルを確実に超えると見られている。