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「祖国を愛することは罪ですか」=外山脩氏が取材で結論=「臣道聯盟はテロと無関係」=証言映画の記念シンポで

ニッケイ新聞 2011年11月22日付け

 「臣道聯盟は65年に渡って冤罪を被ってきた」。18日に行われたシンポ「戦後日系社会への視点」で、ジャーナリストの外山脩さんは、勝ち負け抗争を長年取材してきた成果として、そう結論付けた。これはイマージェンス・ド・ジャポン社の奥原マリオ潤代表らによって11年がかりで撮影された、脇山甚作大佐殺害事件の真相を追った証言映画『闇の一日』の先行上映会を記念して同社が主催したもの。当日は事件実行者の一人、日高徳一さんが講演し、「祖国を信じたというだけの無実の人がたくさん迫害された」と証言し、会場となったパウリスタ法律学校(EPD)の学生を含めて約60人が熱心に聞き入った。

 「ワシらは実際に罪を犯したから償うのは当然。でもただ祖国の勝利を信じただけの、何の罪もない沢山の人が一緒に〃島流し〃の目に遭った」と日高さんはアンシェッタ島に送られた約170人の言葉を代弁した。
 日高さんは、「僕らは臣道聯盟とは関係ない。あったんなら、パステルすら食えないようなヒモジイ思いをしなかった」と繰り返し強調した。
 「僕らは自白したから警察の扱いは悪くなかった。何の罪のない、臣道聯盟の幹部だというだけで逮捕された人は、ご真影や日の丸を踏まないと釈放しないと言われ、それを拒否して、僕らと一緒に島流しにされた」と目を潤ませた。
 脇山事件の実行者の一人、故山下博美さんは生前、こんな話を日高さんにした。捜査官から「お前らはファナチコ(狂信者)だ」と何度も言われ、こう言い返した。「自分達は罪を犯した。でも、祖国を愛することは狂信的で法に触れるんですか、国旗を汚されて怒ることは違法なんですか?」と。
 別の実行者、故蒸野太郎さんもこう言っていた。捜査官から「声を聞いたこともない、姿を見たこともない天皇がこんな時に助けに来てくれるか」と言われたので、「貴方の宗教は」と聞き返すとカトリックだという。「もしキリストを侮辱する人がいたら貴方はどうしますか」と毅然と言い返したら、手を握って理解してくれた。
 一方、外山さんは長年勝ち負け抗争を取材してきた成果として、「臣道聯盟はテロ組織、秘密結社と65年間も思われてきたが、まったくの冤罪であることが分かった」と結論付けた。
 逮捕された臣道聯盟幹部は検察から起訴されたが、裁判所で全員が証拠不十分で却下されたので「刑法上、犯罪性は否定された」という。加えて、勝ち組79人に大統領令で国外追放が言い渡されたが、結局は実行されずに命令自体が解除されたことから「行政的にも問題がなかった」とし、「つまり司法的にも行政的にも何ら違法性はなかった」とした。
 さらに「今まで4〜5人の実行者を取材してきたが、全員が臣道聯盟との関係をきっぱりと否定した」とし、客観的な立場からその関係性を証明する証拠は見つからなかったと語った。
 「二世、三世の代になっても、自分の親は聯盟員だからテロリストだったと誤解している。そんな誤解を続けていいのか。戦後、数千人が逮捕され、虐待拷問を受け、死んだ人までいることをこのまま忘れ去ってしまっていいのか」と無念の表情で問いかけた。
 同法律学校のリカルド・カスチーリョ理事長も演台に立ち、著名な法律家の立場から、「あの時代にコムニダーデは、独裁政権から大変な迫害を受け、多くの人権侵害が行われたことは間違いない。今は改善されたがまだ影響は残っている。この国の発展のために、全ての肌の色において今までの経験から学ぶ必要がある」と提言した。
 当日は、渡部和夫元サンパウロ州高等裁判所判事、下本八郎元日学連会長、山中イジドロ元農相補佐官らも講演した。