ニッケイ新聞 2011年11月23日付け
本紙読者投稿欄「ぷらっさ」の交流会に出席した時、バウルーから参加した小坂正光さんから随筆集『南陽』(日毎叢書企画出版刊)を渡された。05年から今年までに本紙に投稿した16本の原稿をまとめて前半にし、後半にはポ語訳を載せて編集した約70頁の小冊子だった▼終戦の勅諭を聞いて以来、心晴れる日はなく灰色の毎日だったとき、日本からの書物『限りなく日本を愛す』に接し、「感動の余り急にブルブルと胴震いが起こり」、元気を取り戻して仕事に励むようになった経験など興味深い逸話が書かれている▼半年に1回、原稿用紙3枚ほど書いて投稿することは、それほど大変ではないだろう。おそらく出版費用もそんなに高額ではないはずだ。もし子が興味を持たなくても、孫、ひ孫が調べようとするかもしれない。子孫に知って欲しいこと、なぜ自分はブラジルに来たのか、そんなことを書き残したらどうか▼日本文化、日本語をと口を酸っぱくして子に言ってもダメだったと思っている人もいる。だが両語の小冊子にしておけば、いつか興味を持つ子孫が出てくる。じっくりと自分の人生を振り返り、子や孫のためにブラジル初代たる一世の歴史を書き残すのは素晴らしいことだ。時間が経てば経つほど価値が出る、子孫への最高の贈物になる▼いわゆる「移民史」には大衆の話は入らない。有名人、著名人が中心になる。しかし、本当の移民史は、大衆の家族史の積み重ねではないか▼移民150周年、200周年の時に子孫が胸を高鳴らせて読む家族史になるに違いない。まずはぷらっさ欄に投稿を書き、日ポ両語の小冊子にしてはいかが。(深)